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- 2023/03/31 06:10 掲載
「Manufacturing-X」とは何か? いま製造業で起きている“見落としてはいけない”最新動向
連載:デジタル産業構造論
法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科 准教授 / d-strategy,inc / Third Ecosystem,inc / Inclusive AI,inc 代表取締役CEO
野村総合研究所、産業革新投資機構JIC-VGIなどを経て現職。法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科 准教授として、産業価値デザイン研究室にて生成AI・AIエージェントや、フィジカルAI・AIロボット、データスペースなどデジタル技術・先端技術をビジネスや社会の価値へ転換するための手法論の教育・研究を実施。
戦略・DX支援企業のd-strategy,inc(企業のAI変革、DX戦略、デジタルソリューション戦略)を創業し代表取締役として、フィジカルAI、AIエージェントをはじめとするデジタル化・自動化・技術変化の中での企業やスタートアップのDX/ソリューション・イノベーション戦略を支援。
また、グローバルでのスタートアップエコシステム連携プラットフォームのThird Ecosystem,incの代表取締役CEOとして海外・国内のスタートアップエコシステム(VC/CVC/企業/大学/政府機関/スタートアップ)の連携・活性化、スタートアップ企業やエコシステム企業の海外展開支援や、海外スタートアップの日本展開に取り組む。
Inclusive AI,incにおいて盲ろう者(目が見えない・見えづらく、耳が聞こえない・聞こえづらい)、視覚障害者、高齢者等向けのAIエージェントなどのAIサービス開発を実施。「制約のある方を含めすべての方が前向きに活き活きと暮らし、学び、挑戦できる世の中」をAIエージェントやフィジカルAIを通じて実現していくことを目指す。
最新刊として『フィジカルAI進化論~自律するロボットとともに作る産業の未来~』(SBクリエイティブ)を26年10月1日に出版予定。
その他、近著に『生成DX~生成AIが生んだ新たなビジネスモデル~』(SBクリエイティブ)、『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』(日経BP)、
『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社)があり、ビジネス+IT連載『デジタル産業構造論』、MONOist等にてWebメディア連載。
youtubeチャンネル『フィジカルAI時代の産業論 (d-strategy / Third Ecosystem 小宮昌人)』 @dstrategyinc にて生成AIをはじめ産業のデジタル化を解説
今、欧州で何が起きてる? 見落としてはいけない最新動向
現在、欧州で進むデータ共有の在り方を模索する取り組みに関して、多くの人の目が行きがちなテーマが、「各企業が保有するデータのうち、どこを他の企業と協調する領域に設定すべきか」や「データ共有・交換を行うための標準をどう作るか」という点だ。しかし、その裏側の動きにも留意する必要がある。なぜなら、欧州企業を中心に、すでにデータ共有の標準に沿った具体的なデータ共有のためのソリューション開発や、欧州電池規制をはじめとしたデータ共有をすることがビジネス上必須となるようなルール作りがセットで進められているからだ。
そのため、標準などの開発の動向を様子見し、標準が出来上がった段階で活用を検討するといったスタンスでは大きく後れを取ってしまうことに注意しなければならない(図表2)。
Manufacturing-Xとは
そうしたデータ共有に向けた流れがある中で、立ち上がってきた構想が「Manufacturing-X」だ。Manufacturing-Xとは、製造業固有のデータ共有基盤の構築を進めようとするプロジェクトだ。すでに、製造業の中でも、自動車業界においてはCatena-X(自動車業界のデータ共有エコシステム構築に向けた取り組み)が存在するが、Manufacturing-Xでは自動車を含めた製造業全体が対象となる。Catena-Xを土台(BluePrint)としつつも、製造業のセクター横断で進めていくイニシアチブとなっている。
2022年8月31日に承認されたドイツ連邦政府のデジタル戦略においてManufacturing-Xが提示されたのがはじまりだ。なお、VDMA(ドイツ機械工業連盟)は主導している組織の1つであり、その他ndustry4.0推進組織であるPlatform Industrie4.0や、SAPをはじめとするドイツ主要企業が取り組みをリードすると見られている。
Manufacturing-Xの構想が立ち上がった背景
Manufacturing-Xの検討が進む背景には、新型コロナウイルスの感染拡大や、ウクライナ危機、エネルギー危機・原料価格の高騰、気候変動が関係している。これら変化により、世界では供給の不足や生産停止、インフレなど進み、現在、急速に景気後退リスクが高まるなど競争環境が悪化している。そうした危機感もManufacturing-Xの検討が進む理由にある。また、ドイツの産業としては中小企業が多いという特徴があり、これら中小企業がプラットフォーマーに依存しない相互運用性の高いデータエコシステムの構築が求められている。その裏側には、欧州としては図表4のとおり、莫大なデータをもとに競争力を持つ米国や中国をはじめとするメガプラットフォーマーへの対抗軸を打ち出すという思惑も存在する。
Manufacturing-Xの「3つの目的」
Manufacturing-Xが掲げている目的は大きく3つに分かれる。(1)レジリエンス
インシデントに迅速に対応できるバリューネットワークの再構築
(2)持続可能性
新しいビジネスモデル、循環型経済、効率性の向上
(3)競争力
ドイツ産業のグローバル・リーダーシップの確保、デジタルイノベーションの拡大
このように、Manufacturing-Xが掲げる目標は、人間中心とともにレジリエントやサステナビリティをコンセプトに掲げる欧州委員会の「インダストリー5.0」や、ドイツがIndustry4.0の次のコンセプトとしてデータ共有につながる自己決定権・自律性やサステナビリティ、インターオペラビリティを掲げている「Industry4.0 Vision2030」と大きくリンクしている形となる。 【次ページ】Manufacturing-Xの超重要な「5つの柱」
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