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  • 2022/10/11 掲載

e-fuel(合成燃料)とは何か? トヨタも取り組む「CO2を排出しても脱炭素」の作り方

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カーボンニュートラルに向けて、自動車などに利用するクリーンエネルギーが期待される一方、2040年のガソリン車の割合は依然として全体の84%を占めると予想されている。こうした中で注目を集めているのが、CO2と再生可能エネルギー由来のH2を合成して製造される液体の合成燃料「e-fuel(イーフューエル)」だ。ここでは、2021年4月に経済産業省の合成燃料研究会がまとめた「中間取りまとめ」を踏まえながら、e-fuelのメリットや課題、国内外の動向などについて、わかりやすく解説する。

執筆:元技術系公務員ライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)

執筆:元技術系公務員ライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)

東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として採用され、製造業者などさまざまな企業に対し、工場排水や廃棄物処理などの環境法令に関する実務を主に担当。公害防止管理者や廃棄物処理施設技術管理者などの国家資格を保有。2022年からフリーライターに転身し、環境ジャンルの専門性や、製造業と公務員のバックグラウンドを生かし、webメディアや企業サイトの記事などの執筆を行う。

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e-fuelとは何か
(Photo/Getty Images)

e-fuelとは何か、なぜ地球に優しいのか?

 e-fuel(イーフューエル:合成燃料)とは、CO2と、再生可能エネルギーによる水の電解(electric)から得られたH2を用いた合成燃料で、ガソリンや軽油などの代わりとして期待されている脱炭素燃料である。e-fuelは合成燃料の1種となるが、その合成燃料はCO2とH2を合成して製造される燃料であり、ガソリン、軽油、灯油などの混合物を含む「人工的な原油」のことを言う。

 原料となるCO2は、現状では発電所や工場などから排出されたものを利用することとなるが、将来的には「DAC(ダイレクトエアキャプチャー)技術」を使って大気中のCO2を直接分離・回収したものを利用することが想定されている。

 しかしe-fuelは、燃焼時に排出されるCO2が通常のガソリンを使った場合と同じである(図1)。

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図1:e-fuelはCO2を資源とするため、燃焼時にCO2を排出しても吸収量と差し引いて、全体としての排出量はゼロになる
(出典:石油エネルギー技術センター レポート「CO2を原料とした液体合成燃料の開発への取り組み 」)

 だが、製造時にCO2を資源として利用するため、CO2の排出量と吸収量を差し引いて全体としての排出量はゼロとなる。このため、カーボンニュートラルである「脱炭素燃料」と言われている。

e-fuelの作り方

 合成燃料の製造は、600度以上の高温下で触媒を用いてCO2をCOに転換させ(逆シフト反応)、生成したCOとH2をFT合成反応(フィッシャー・トロプシュ合成反応)により行う(図2)。

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図2:合成燃料およびe-fuelの製造方法
(出典:経済産業省 資源エネルギー庁の資料より編集部作成)

 ほかにも、CO2とH2を合成したメタノールやメタンなども合成燃料と呼ばれる。合成燃料がe-fuelと言われるためのポイントは「再生可能エネルギー由来のH2を使う」こと。化石燃料由来のH2を使った場合、製造過程で発生したCO2を分離・貯留した後、別途、CO2と合成させるため、製造プロセスが非効率になる。

e-fuelとバイオ燃料の違い

 カーボンニュートラルな燃料として、「バイオ燃料」がすでに商用化されているが、e-fuelとは何が違うのか。

 バイオ燃料は、サトウキビなどの作物や生ごみなどの廃棄物といった、バイオマス(生物資源)からつくられたバイオエタノールやバイオディーゼルなどのことを言う。米国やブラジルなどで普及している一方、日本国内においては原料不足や製造コストなどの課題もあり、バイオ燃料だけで燃料問題のすべてを解決できるわけではない。

 対して、e-fuelなどの合成燃料は原料がCO2とH2で、工業的に生産できる特徴がある。e-fuelがバイオ燃料に取って代わるというよりは、両者の特長を生かして化石燃料から脱炭素燃料へのシフトを進めることが望ましい。

e-fuelの「4つのメリット」

 ここではe-fuelを利用することのメリットについて、4点を紹介する。

・「既存のガソリン車」などでも利用可能
 e-fuelなどの合成燃料の最大のメリットは、ガソリンや軽油と同じように使えるため、既存のガソリン車や軽油車で燃料としてそのまま使えること。もちろん、既存のガソリンスタンドの設備で使えるため、新たな設備を導入する手間やコストがかからない。

・ガス燃料や電池よりも高い「エネルギー効率」
 液体燃料全般に言えることだが、水素ガスなどのガス燃料や電池と比べて、同じ体積または重量あたりのエネルギー密度が高い(図3)。

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図3:e-fuelは液体燃料のため、ガス燃料や電池に比べてエネルギーの密度が高い

 つまり、液体燃料はより少ない量で多くのエネルギーを有していることになる。電気自動車よりもガソリン車の方が、長距離移動に向いているのもこのためである。

・災害時でもカンタン供給
 積雪などにより停電した地域や、高速道路などで立ち往生した自動車に対して、液体燃料であると供給しやすい。また、災害対応機能を有する既存のサービスステーションや燃料タンクを利用し備蓄できる。また常温で液体のため、H2といったほかの新燃料に比べて長期的な備蓄に優れている。

・タンクなどの「設備損傷リスク」の低減
 合成燃料は、原油にくらべて硫黄や重金属といった不純物が少ないため、燃焼時に設備を傷めにくく、設備保護の面からも大気汚染の面からもクリーンな燃料という特徴がある。

e-fuelへの「4つの期待」

 ここではe-fuelの活用に期待されていることについて、政府と3つの業界の観点から紹介する。

・自動車業界
 自動車業界ではすでに乗用車の電動化が進んでいる。しかし電動車には、航続距離や充電時間、積載量、インフラ整備などの課題があり、特にトラックなどの商用車の電動化は簡単ではない。したがって、バイオ燃料や水素ガスに加え、合成燃料などの代替燃料の利用が期待されている。

【次ページ】e-fuelへの「もう3つの期待」や「デメリット2点」、日本と海外の「最新動向」を解説

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次のページ以降では、製造コストをはじめとした課題やデメリット、e-fuelへの期待、ENEOSなど日本と海外の最新動向などについても解説します

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