• 2026/01/17 掲載

ほんとに安い… EV「価格戦争」が激化、BYD・テスラ・トヨタの戦略と今後の価格見通し(2/2)

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原価はどこまで下げられるのか

 値下げの余力を考えるには原価の棚卸しが欠かせない。一般にEVの原価で比率が大きいのは電池だ。材料価格の変動、セルの調達・内製、車体の軽量化、電装の統合など、効く手段は多い。

 下がりやすいのは規模効果が働く部分だ。生産台数が増えれば設備の固定費が薄まり、1台当たりの負担は下がる。中国でEVの生産と輸出が拡大してきた事実は、規模効果が出やすい環境を示す。量が出れば調達は有利になり、物流も効率化できる。販売網の固定費も薄まる。値下げは「原価が下がったからできる」面と、「原価を下げるために台数が必要」な面が同居する。

 一方、下がりにくいのは安全や品質に直結する部分だ。部材を安くしても、耐久性や安全性に問題が生じれば、リコールやブランド毀損で取り返しがつかない。値下げ競争がどこまで許されるかの上限は、ここで決まる。値下げが続く局面では品質コストを表に出しにくいが、不具合は後から最も高くつく。

 さらに2026年は政策の揺れも原価と販売に影響する。EV販売は補助金や税制の影響を受けやすい。需要が読みにくいほど、メーカーは在庫を避け、短期的な値下げや販促に傾きやすい。ただ、販促は万能ではない。強めるほど利益は減り、次の投資に回す余力も細る。ここに値下げの限界線がある。

値下げ競争の先に残る企業の条件

 一般的なビジネス論として、多くの市場で値下げ合戦は長く続かない。最終的に残るのは、価格以外の価値を提示できる企業だからだ。消費者の視点では「安く買えれば良い」となりがちだが、産業の視点では「安さを持続できる仕組み」が問われる。これを見誤ると、安い車を選んだつもりが、充電網や保証、下取りで不利になる可能性もある。

 第1の条件は、価格攻勢に対して政策や規制の逆風を受けにくい形で販売を伸ばすことだ。EUで議論される最低価格の枠組みは、価格だけで押し切る戦略が通商問題に発展し得ることを示す。

 第2の条件は、需要の伸び鈍化局面で利益と成長のバランスを取り直すことだ。値下げは成長の手段だが、常用すれば体力を削る。

 第3の条件は、消費者の不安を取り除く説明力である。保証やサービス、下取りといった周辺設計まで含めて示せる企業が、値下げ競争後の市場で信頼を積み上げる。値下げのニュースは派手だが、本質は原価、規模、規制、安心の4点に集約されるだろう。

 EVの戦いは市場の成熟化に合わせて、新局面を迎えている。

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