日本の製造業が求められていることは何か
日本のものづくり企業を取り巻く環境は、めまぐるしいスピードで変化している。「Japan as No.1」と、もてはやされた時代は遠い過去に追いやられ、いまや「Made in Japan」の神通力も弱まってきた。世界を席巻した国内の総合電機メーカーは衰退し、新興国で生まれた新しい企業が猛烈な勢いで追い上げている。しかし、巻き返しを図る日本企業には多くの課せられた使命がある。
たとえば、各国の文化や風習などによって消費者ニーズが大きく異なることが挙げられる。先進国でさえ、かつてのように高機能製品だけで売れるような甘い状況ではない。まして新興国ではなおさらのことだ。当然ながら、その国の「要求品質(=お客さまがこういったモノがほしいと要求する品質)」にマッチした規格に合わせて、ローカライズを進めていく必要がある。
また、各国のさまざまな法令に合わせたモノづくりも求められる。日本はもちろん、EUと米国でも規制は大きく異なり、規制の種類もREACHやRoHS、POPs規制、PL法、ドッド・フランク法など、枚挙にいとまがない。こうした制約条件のもとで、グローバルに展開できる製品を新たに開発していく「設計品質(=設計図において規定された品質)」が求められる。
さらに最近では、さまざまな新技術も台頭してきた。あらゆるモノがネットでつながる「IoT」(Internet of Things)はその典型だ。センサーから吐き出されるさまざまなデータを活用し、効果的に「製造品質(=実際に製造したモノの出来栄えの品質)」の向上に結びつけている企業も登場してきた。
そして、ソーシャルメディアでつぶやかれるユーザーの噂・口コミ情報といった非構造化データを活用する企業も少なくない。こうしたユーザーの声を積極的に取り入れ、ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)を高め、「使用品質(お客さまが使用した際に発揮される品質)」を向上させながら製品を迅速に改善していかなければ、新しい時代の要請に取り残されてしまうことになりかねない。
製造業の業務改善やIT基盤の構築を手がけるTISの北垣隆夫氏は次のように語る。
「もちろん製造・設計・要求・使用につながる重要な品質課題を解決するために、先進的な情報基盤を構築して、積極的に活用している企業も数多くあります。そのような企業は、品質に関わるさまざまなデータを長期的に蓄積し、それらをもとに品質改善の仮説・検証を正確かつ迅速に行っています」(北垣氏)
ここからは、同社が手がけた情報基盤によって品質を改善し、競争力の向上に成功した代表的な2つのグローバル企業について紹介しよう。