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- 2026/10/14 16:55 掲載
「AIの父」ヤン・ルカンが語る「LLMの限界」、次世代AIの本命「世界モデル」とは?
日本に足りないのは「自信」? 製造業のデータが持つ価値
工場や設備を動かすAIを、企業や国が自ら所有し、制御できるのか。東京・神谷町で開催されたIIAC 2026は、「産業AIの主権」をテーマに、産業界や研究機関などの関係者が議論する場となった。共同記者発表会では、日本の製造業に足りないものは何かという質問に対し、Aitomatic(米国シリコンバレーに拠点を置く産業特化型の生成AIスタートアップ企業)のCEO兼共同創業者であるクリストファー・グエン氏が、技術や資金とは異なる課題を挙げた。日本が物理的な産業で持つ優位性への認識、そして自信である。
「1つだけ挙げるなら、日本が持つ優位性をしっかり認識し、それを活用することです」(グエン氏)
同氏は、日本には世界モデルの開発にもつながる優れたデータ源があると指摘。その強みを十分に認識できていないことが、AIの実装を制約しているとの見方を示した。
ASI Foundry(フィジカルAIや産業AIを現実の製造現場やインフラへ統合・普及させることを目指すグローバル組織)会長のジミー・リー氏も、日本の強みとして精密な製造技術と高品質なデータを挙げた。産業データにAIを組み合わせることを、資源を価値ある製品に変える精製になぞらえ、日本企業の知見は自社だけでなく世界に価値を提供できると説明した。
ただし、優れたデータがあれば自動的に優位に立てるわけではない。各国が工場にAIを導入する時代にも日本のデータには独自の価値があるとしつつ、行動を急ぐ必要性を強調した。
「皆さんのデータは特別です。ほかとは異なる、より高い価値を引き出す力があります。ただし、そのためには先行者になる必要があります。迅速に動かなければなりません」(リー氏)
利用企業の立場から課題を語ったのは、JSRでマテリアルズ・インフォマティクスを担当する永井智樹氏だ。
「AIには、化学へのより深い理解が必要です。反応条件や反応の仕組み、実験結果などです」(永井氏)
同氏は、企業が持つノウハウを活用できる柔軟でオープンな仕組みに加え、実際の研究開発業務に組み込むことが重要だと説明した。
最先端AIを使いながら知識を守る「Project Tapestry」とは
ただし、AIを利用できることと、そのAIや学習に使うデータを自ら制御できることは、同じではない。発表では、最先端AIへのアクセスと、各国・企業の主権を両立させる取り組みとして「Project Tapestry」が説明された。IBMでAIオープンイノベーションを担当するアンソニー・J・アヌンツィアータ氏は、同プロジェクトが取り組む問いを次のように説明した。
「世界が協力し、オープンにすべきものは何か。そして、独自の優位性のために専有し、保有すべきものは何か」(アヌンツィアータ氏)
基盤となるAIモデルは共同で開発し、誰もがその上に独自の仕組みを構築できるようにする。その共通基盤を使い、各国や企業が自ら所有するAIの能力を高めていく構想だ。同氏は、小規模なモデルから着手し、今後18~24カ月でより大規模かつ高性能なモデルへ進むロードマップを示した。
グエン氏は、その受益者として国、産業、企業、個人を挙げた。目指すのは、最先端のAIを利用する機会を確保すると同時に、その所有や利用を一方的に奪われない状態を実現することだという。
ソブリンAIの意味を、情報や文化の側面から説明したのが、AMI Labsの創業者・会長であり、Project Tapestryのチーフサイエンティストも務めるヤン・ルカン氏だ。
ルカン氏は、現在のAIの発展を支える深層学習の先駆者で、「AIの父の1人」として知られる。ジェフリー・ヒントン氏、ヨシュア・ベンジオ氏とともに、深層学習の基礎と実用化への貢献が評価され、2018年のチューリング賞を受賞した。今日のAIを飛躍させた当事者の1人である。
「主権とは、地域の言語、文化、価値観を理解するAIへのアクセスを自ら確保することです」(ルカン氏)
基盤を共同でつくり、その上で各国や企業が独自の知識や文化を反映させる。日本の産業データを生かすうえでも、AIの性能だけでなく、知識の所有と制御をどう設計するかが論点となっていた。
「言語やコード、数学のような離散的な記号を扱うことは、現実世界を理解することよりも、はるかに簡単なのです」(ルカン氏)
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