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- 2023/12/18 掲載
岸田内閣のリスキリング支援はズレまくり…「5年で1兆円」が迎える“最悪な”末路とは
リスキリング政策が“的外れ”と言える問題点
こうした認識は正しい。ただし問題は、どのようにしてリスキリングを進めるかだ。
岸田内閣も、リスキリングの重要性をさまざまなところで強調している。そしてそのための補助策をとる、としている。岸田首相は、2022年10月に行われた衆院本会議での所信表明演説の中で、個人のリスキリング支援に5年で1兆円を投じるとした。
リスキリングに対してはすでにさまざまな補助金や助成金があるが、政府は、雇用保険を財源として補助金を支出することを検討している。資格学習の費用を助成する「教育訓練給付」の拡充を検討している。
しかし雇用保険は、失業者の生活を支える給付を行うための制度だ。その対象をリスキリングにまで広げるのは、制度の本来の趣旨からは逸脱するものであり、問題がある。さらに、このような方策はピントがずれていると思う。
なぜなら、この方策は、「リスキリングのためには何らかのセミナーを受講しなければならない」ということを前提にしているからだ。
しかし、リスキリングは、基本的には独学で進めることができるものだ。あるいは、独学の方が効率的なものだ。勉強のためにセミナーを受講しなければならないというのは、固定観念に過ぎない。
「集団」ではなく「個別」教育が必要なワケ
セミナーは、参加者全員に同じ内容の講義をするものだ。これは学齢期における学校での授業を継続した方法だ。しかし、成人してからのリスキリングにおいては、この方式は適切なものではない。なぜなら、目標とするレベルとこれまで獲得しているレベルの間隙を満たすことがリスキリングの目的だからだ。目標レベルにおいても、これまで獲得したレベルにおいても、成人の場合には極めて大きな個人差がある。
したがって、リスキリングは個別教育を行わなければ有効なものとはならない。集団教育では個人の事情に合わせた教育ができないから、内容が難しすぎたり、あるいは知っていることばかりで格別の役に立たなかったり、という事態が発生する。 【次ページ】リスキリング政策が「最悪な結果」に終わりそう…
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