焦点：税収増も給付財源得られず、頼みは「土台増」　借金回避へ綱渡り

Takaya Yamaguchi

［東京　２日　ロイター］ - ２０２４年度税収が補正後想定から上振れした。ただ、３兆円台半ばとする現金給付の税財源は得られず、政権与党の頼みの綱は、今回の上振れで得られる「土台増」が２５年度税収にどう反映されるかに移る。赤字国債回避に向け、税収を先食いする綱渡りの財政運営が続きそうだ。

＜税外収入も上振れ＞

複数の政府・与党関係者によると、２４年度税収は昨年１１月時点の想定（７３兆４３５０億円）を１兆８０００億円弱上回った。税収は７５兆２０００億円台となり、５年連続で過去最高を更新した。

基幹３税のうち、所得税収と消費税収は想定を上回った。一方、法人税収は補正後の見積もりに届かなかった。

歳入では、日銀からの国庫納付などの税外収入も１兆６０００億円余り上振れした。リーマン危機時の２００８年度を除いて続けてきた赤字国債の減額は５兆円とした。

歳出では、年金特会への繰り入れなど予算の使い残しを４兆３０００億円余り計上。差額となる決算剰余金（財政法６条ベース）は２兆３０００億円弱と、２３年度の剰余金を兆円単位で上回る。財務省が２日発表する。

＜特例法活用の過去＞

とはいえ、石破茂首相（自民党総裁）が参院選の公約に掲げた現金給付に必要な金額には届いていない。

決算税収の公表に先立ち、首相は、税収の上振れ分を還元するとし、国民１人あたり２万円を配ると表明。低所得世帯にはさらに２万円加算するため、３兆円台半ばの財源が必要になるとしていた。

２４年度決算で得られた剰余金は、そもそもフルでは使えない。財政法では決算剰余金の半分以上を国債償還に充てると定められ、「全額使うには特例法が必要」（政府関係者）とされる。直近では１９年度決算でこうした手法が用いられ、追加歳出に転用した例がある。

今回のケースでは１兆円余りが原資に相当するが、防衛費の増額などに充てられる分も加味すれば「給付財源としては心もとない」と、別の政府関係者は語る。

＜先食いにもリスク＞

７月３日公示、２０日投開票の参院選を経た秋にも補正予算案を編成する場合、補正と併せ、２５年度税収（７７兆８１９０億円）を見直す可能性もある。

前年度の税収が上振れすれば、特殊な事例を除き、今後の税収増に寄与する「土台増」が生じるとされる。「２５年度税収を蹴り上げて給付財源にすることも考えられる」と、前出と別の関係者は言う。

ただ、税収の先食いにもリスクが伴う。米関税交渉の行方が見通せない中、夏場以降の景気失速を懸念する声が現実味を帯びれば、思惑通りに税収を確保できるかも危うい。

現金給付の財源に関し、石破首相は「赤字国債は絶対に出してはいけない」と強調するが、巡り巡って借金頼みのばらまきとなる懸念は拭えない。