- 2026/03/26 掲載
アングル:日銀ターミナルレート予想上振れ、原油高を懸念 円金利にテールリスク
[東京 26日 ロイター] - 原油高が世界の金利上昇を促す中、市場が予想する日銀の利上げ最終到達点(ターミナルレート)が上昇している。中東情勢の不透明感が続く中、原油高は短期間で収束しないとの見方が広がり、インフレと景気悪化が同時進行するスタグフレーションのリスクや財政懸念がくすぶっているためだ。長期金利はテールリスクとして、年初来の高水準を更新する可能性が意識され始めている。
<利上げ最終到達点予想は一時1.8%付近に>
市場が予想するターミナルレートの指標となるオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)の2年先1カ月フォワード金利は23日、一時1.8%台まで上昇。長期金利が27年ぶり高水準の2.38%を付けた1月20日時点のターミナルレート予想(1.76%近辺)を上回った。
中東情勢の緊迫長期化で原油価格が高止まり、ドル/円が上昇する中「日本もインフレ率が高止まりすることへの警戒感が広がった」とSMBC日興証券の金利・為替ストラテジスト、丸山凜途氏はみる。LSEGのデータによると、期待インフレ率を示す指標の10年債ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も上昇基調にあり、19日に一時1.81%まで上昇していた。
3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)をはじめ、海外中銀の政策決定会合で「コストプッシュ型のインフレに対して利上げで対応することが明確に打ち出された」(ニッセイ基礎研究所の金融調査室長、福本勇樹氏)との受け止めが波及した面もある。
足元では日銀の政策金利見通しを反映しやすい2年債利回りが30年ぶりの高水準を更新するなど、利上げへの警戒が広がっている。
<長期金利に需給面からの支え>
一方で、ターミナルレート予想と連動性の高い長期金利の上昇は限定的だ。足元で2.27%台と27年ぶりの高水準となった2.38%までは距離がある。
背景には、需給面の支えがあるとみられている。期末を控えた残高調整で国内勢による駆け込み需要が入ってるほか、ドル建てで3%超えの利回りが上乗せされる日本国債への海外勢による買いが継続している。
イラン情勢の動向を見極めたいとの様子見が広がる中、足元でヘッジファンドなど多くの市場参加者は、すでにポジションをショート(売り)に傾けているとみられ「新規でショートポジションを積み増す動きは現状ではみられない」(国内証券債券セールス担当)といい、売り急ぐ向きは少数派という。
<スタグフレーションリスクと財政懸念>
市場ではこの先も「金利上昇余地はまだ残る」(国内銀の運用担当)との声は根強い。
仮にイラン情勢が終息したとしても、地政学リスクはくすぶり続け、エネルギー価格が高止まりする可能性があり、「政府は物価高対策として別途予算を出さなければならなくなるのではないか」(同)など、財政への懸念がぬぐえないからだ。すでに、社会保障国民会議で食料品の消費税率を2年間ゼロにする消費減税について議論が続いている。
「輸入依存度が高い日本は資源価格の高止まりでコストプッシュ型のインフレがより意識される」とニッセイ基礎研の福本氏は指摘。欧米中銀が利上げで対応する姿勢を示す中、日銀が利上げを見送れば、外為市場では円安が進みやすい。消費の低迷など経済への悪影響も出てくれば、福本氏は「市場はスタグフレーション・リスクを一段と織り込み始める」とみる。
<原油価格が焦点>
目先は原油価格がどこで落ちつくかが焦点となっている。
1バレル=60―70ドルで推移していた米WTI原油先物価格が、リスクプレミアムの上乗せで70―80ドルの推移となった場合でも「消費者物価(CPI)は上振れるものの、過度な景気後退には陥らないとみられ、スタグフレーション・リスクは大きくは高まらない」とSMBC日興証の丸山氏はみる。
野村証券のエグゼクティブ金利ストラテジスト、岩下真理氏は「(米WTI原油先物が)極端に100ドルを超えていかなければ、日銀も利上げに踏み切りやすくなる」との見方を示す。一部の市場参加者の間で広がるビハインドザカーブ・リスクの後退にもつながる。
一方、原油先物価格が恒常的に100ドルを超え、ドル/円が160円を超えるといった状況が重なるようなリスクシナリオが実現する可能性も否定できない。ニッセイ基礎研の福本氏は「スタグフレーションのリスクと財政懸念が膨らめば、長期金利が27年ぶり高水準を試す可能性は残る」と話している。
(坂口茉莉子 編集:平田紀之 石田仁志)
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