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  • 2022/06/08 掲載

セールスフォースの“最先端”カスタマーサクセスとは? その「仕組みとKPI」

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CX(カスタマーエクスペリエンス/顧客体験)向上が企業業績に大きなインパクトを与え、部門連携でCX最適化に取り組むべきとの認識が広がっている。いわゆるカスタマーサクセスは顧客の離反防止だけでなく、クロスセル、アップセルのための有効施策としても注目されるが、2005年に日本初のカスタマーサクセス組織を立ち上げたセールスフォースではどのような思想で、どんな取り組みを行っているのか。独自のカスタマーコミュニティ「Trailblazer Community(トレイルブレイザーコミュニティ)」の運営など、最先端の取り組みやKPIについて聞いた。

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カスタマーサクセスの先端組織はどのように運営されているのか
(Photo/Getty Images)

セールスフォースはなぜカスタマーサクセスを重要視しているのか

 顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上が企業の業績向上に不可欠との認識が広がり、CXの向上は企業の大きな経営課題の1つとなっている。

 この分野の草分け的存在がセールスフォースだ。主力のクラウドCRM「Salesforce Customer 360」について、株式会社セールスフォース・ジャパン カスタマーサクセス 統括本部 マーケティング&イネーブルメント本部 本部長の坂内 明子 氏は「顧客とのあらゆる接点で情報が分断されることなく適切なCXを提供するプラットフォームだ」と説明する。パートナーが提供するサービスをシームレスに連携させながら、利用企業のお客さまに対してCXを提供することが可能なツールだ。

 また、セールスフォースはユーザー企業のカスタマーサクセスに注力する先駆的な企業としても知られる。

 坂内氏は同社について「ツールの販売だけでなく、ユーザー企業がツールの利用に習熟し、そのお客さまに最高のCXを提供できるよう支援することが大事という思想が根付いている」と語る。

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セールスフォース・ジャパン
カスタマーサクセス 統括本部
マーケティング&イネーブルメント本部
本部長
坂内 明子氏

 この思想の担い手となるのが、ユーザー企業やパートナー企業にいる「Trailblaze(トレイルブレイザー)」と呼ばれる企業のデジタルトランスフォーメーションを支え、革新に挑戦するけん引役だ。「全世界に約1500万人のTrailblazerがおり、日本でも多くのTrailblazerが先駆者たちの知見を紹介したり、アイディアを交流させるコミュニティ活動に従事している」と坂内氏は説明する。

 企業の枠を超えた、Salesforceの活用を成功に導くカスタマーエクスペリエンスの取り組みは、新たな経済圏を作り出しており、IDCの調査によれば「2026年までにグローバルで930万人の雇用がSalesforceエコノミーで新しく生まれ、新たに生まれる事業収益は1兆6,000億ドルにのぼる」(坂内氏)ということだ。

「分業化ありき」では、シームレスなCXが提供できない

 2005年に日本初のカスタマーサクセス組織を立ち上げたセールスフォースは、17年にわたり、さまざまな取り組みを進めてきた。「2010年にはユーザー会を開設し、カスタマーサクセスのメソッドの作成を経て、2015年にはユーザー会を自走コミュニティへと発展させ、オンボーディングプログラムを開始した」と坂内氏は述べる。

 サポートやコンサルティングサービスも含めた包括的なカスタマーサクセスに発展させただけでなく、実務のワークフローに沿った学習を進め、新しいスキルを学習できる「Trailhead(トレイルヘッド)」と呼ばれる教育プログラムも提供している。

 こうした取り組みを推進する同社のもとには「カスタマーサクセス部門を立ち上げたいという相談が増えている」と坂内氏は話す。しかし、坂内氏はこうした相談に関して感じていることがあると話す。

「カスタマーサクセスのプログラムは、サポートや有償のコンサルティングであるプロフェッショナルサービスなど、既存の顧客と直接タッチポイントのある担当者が担うとの認識が一般的です」(坂内氏)

 しかし、「カスタマーサクセスは部門単体では実現できない」というのが坂内氏の持論だ。
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カスタマーサクセスは部門単体では実現できない

 よくあるのが、カスタマーサクセス部門は顧客対応の「なんでも屋」として営業部門やマーケティング部門、サポート部門やコンサルティング部門などといったプリセールス部門と分断されているケースだ。しかし、こうした分業化は「顧客対応の押しつけ」や「KPIが部門最適化し全体最適になっていない」「共通ゴールが不明確」といった問題を招きやすい。

 この点、セールスフォースでは「The Model」と呼ばれる、営業プロセスモデルを開発、活用してきた。これは、集客から商談・クローズ、カスタマーサクセスに至るまでの各段階で情報を可視化・数値化し、部門を越えた連携を軸に売上の増大を図っていく考え方のことだ。

 坂内氏は「カスタマーサクセスは、ビジネスを支える文化、価値基盤であるべき」だとする。そして、さまざまな役割の違いはあれど「お客さまの成功を支援する共通認識を持つべきだ」と話す。その共通認識のもとで、いかに他の部門と連携するか、この思想があって初めて分業化が意味を成す。「分業化ありき」では、シームレスなCXが提供できないのだ。

営業との連携により体系立てたカスタマーサクセスプログラムを提供

 セールスフォースでは、カスタマーサクセス実現のための指標も細分化している。坂内氏は「私たちのようなSaaSビジネスでは、一般的な指標としては『更新率の向上』が挙げられる」と述べた。同社では、こうした「守り」の指標だけでなく、ユーザー企業の成功、つまりLTVの向上による「レベニューの拡大」を重視している。これは単にツールを売るのではなく、「ツール活用によるビジネス変革の価値を感じてもらうことが大事」という考えに基づいている。

 そのために、ユーザー企業の成功状況を数値化した独自の「ヘルススコア」や、「エンゲージメント拡大」といったKPIも定めている。

「こうした指標に基づき、契約から次の更新に至る、導入、定着、活用といったプロセスで、個別支援や、ウェビナーや動画、ユーザー会などのマスでの支援、マーケティングオートメーション(MA)でのメール配信などの自動化された施策などを定め、実施しています」(坂内氏)

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お客さまとの継続的なエンゲージメント

 また、施策実施に際しては、「営業との連携」が重要なポイントを握る。すべてのユーザー企業に対して、カスタマーサクセスマネージャーをアサインすることは「現実的には難しい」からだ。

「その点、営業であれば各社に担当がおり、お客さまにとってのタッチポイントといえばまずは営業です。そこで、営業担当と連携して、カスタマーサクセスが有するノウハウを営業を介してお客さまに届けていくことが大事だと考えています」(坂内氏)

 たとえば、営業からカスタマーサクセスに対しては、お客さまの課題やビジネスゴール、展開のロードマップや拡大戦略などといった「アカウントプランの共有」がなされ、カスタマーサクセスから営業に対しては、「タッチモデル」に基づき、単価が高額なサービスを利用しているハイタッチ顧客の利用状況や当初のゴールに対してのステータスなどの情報が提供される。

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営業との連携

 また、全体の収益に与える影響が大きいロータッチ顧客に関する「成功パターン、失敗パターンの共有をはじめ、支援方法の定期的な勉強会などを通じて、「デジタルだけでなく、人の強化も同時に進めていくことが大事だと思っている」と坂内氏は話した。

 そして、セールスフォースでは、ハイタッチの顧客に対して営業から得られたビジネス課題に対して、カスタマーサクセスがどのように成功を支援するかを提案するためのフレームワークを策定している。

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Salesforce活用支援のフレームワーク

 坂内氏は「SaaSビジネスの解約につながるケースでは、プロダクトそのものではなくオフライン(運用)の部分の不満が解約につながる場合が多いと感じる」と述べた。

 たとえば、ツールの購入時を境に「現場の担当者との議論のテーマがUI改善の話が中心になってしまう」ケースがある。本来はツールを活用して成し遂げたかった業務改善やビジネス価値の創出が、いつのまにか「入力しやすい画面とは」という運用の話がメインとなってしまい、改善したい部分とかけ離れた議論になって、投資対効果が見えないことから解約となってしまうケースだ。

「カスタマーサクセスマネージャーは、お客さまの個別の評価指標や戦略などを営業と確認しながら、お客さまにとっての投資対効果とは何かを確認していくことが大事です」(坂内氏)

 そして、顧客に対して適切なカスタマーエクスペリエンスが提供できているかの指標として、独自の「ヘルススコア」も策定した。策定した当初は「購入ライセンス数に対するアクティブユーザー数」「アクティブユーザーのログイン率」などの項目だったものが、16年が経過した現在は「データ入力数、データの入力変遷」「分析機能活用数」「各種機能利用数」「システム連携」などのように細分化され、総合的な判断でスコアリングしているということだ。

「ギブアンドテイク」をベースにしたコミュニティ活動

 さらに、CX向上の担い手としての「トレイルブレイザー」の存在も大きい。「日本では、3万人のトレイルブレイザーを擁し、200人のコミュニティリーダーが30ものコミュニティグループを運営し、自主的な勉強会などのコミュニティ活動を行っている」と坂内氏は説明した。

 併せて、トレイルブレイザーのスピーディなスキルアップを支援する教育プログラムや、自学自習できるツールも提供している。

 こうした支援を得て、トレイルブレイザーとして活動するのがNTTテクノクロス カスタマーエクスペリエンス事業部 エバンジェリストの鈴木 貞弘氏だ。同氏は、NTTテクノクロスでSalesforceのビジネス企画に携わる一方、トレイルブレイザーとしてSalesforceの情報を発信するエバンジェリストとしても活動している。

 鈴木氏は「セールスフォースのユーザーは導入したての企業から10数年のベテラン企業まで多様だ」とし、「コミュニティを通じて、さまざまなユーザーが自社のセールスフォース活用のヒントを得ている」と話した。

 なかでも年1回開催される「Salesforce全国活用チャンピオン大会」では、さまざまな活用事例やベストプラクティスが共有されるが、「こうした事例はなかなかベンダー側から伝えられないのが現状でセールスフォースのコミュニティの象徴的な事例といえる」と説明した。

 そして、セールスフォースのトレイルブレイザーとして活動する意義として、鈴木氏は「コミュニティ活動を通じて得られる、ユーザー企業の課題やベストプラクティスは、自社のセールスフォース活用に生かしたり、新しいビジネス創出に活かしたりすることができる。ギブアンドテイクをベースにしたコミュニティ活動の趣旨に賛同している」と話した。

 2020年9月には、さらなるカスタマーエクスペリエンスのために「Digital 360」が展開された。これは、ユーザー企業を中心にエキスパートにより提供されるサービスや幅広いパートナーエコシステム、Trailheadのオンデマンド学習を強化するものだ。

「お客さまに適切な提案をするために、何が必要か。まずはお客さまとのコミュニケーションを活性化し、お客さまの状態を知ることが重要です」(坂内氏)

 そこで、あらゆるタッチポイントをデジタルに集約して「このお客さまに何を提案したらいいか、担当者が理解できるようにする」のが狙いだ。具体的には、マーケティング担当者がすべての顧客データを統合する顧客データプラットフォーム「Customer 360 Audiences」や、決済ソリューション「Commerce Cloud Payments」、CRMを活用したデジタル体験を迅速に構築する「Experience Cloud」などが含まれる。

 今後もマーケティングやコマースなどを通じて、デジタルリーダーがパーソナライズされ連携したCXを提供できるよう、新しいテクノロジーとサービス、ラーニングを提供していきたい──。坂内氏はこのように述べた。

 そして、セールスフォースも、単なるイベントではなく、セールスフォースに携わる人に大きな価値を提供する思想のもと、今のトレイルブレイザーを中心としたコミュニティ活動を作り上げてきたとして、こうした取り組みを参考に、ぜひ顧客のエンゲージメント強化の施策に生かしてほしいと締めくくった。

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カスタマーエクスペリエンス向上のために

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