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- 2025/06/26 掲載
主力事業崩壊?不正だらけの「日本郵便」、事業構造を見たら…もっとヤバかった理由
経済、不動産分野のライター。小売・飲食を中心とした企業分析記事や、都市開発、不動産市況に関する記事を手がける。理系の会社員だったが、ライター業に専念するため独立した。趣味で簿記・ファイナンシャルプランナーの資格を取得する。
75%の郵便局で不正が発覚、輸送能力はどうなる?
配達員の酒気帯びなどを確認する点呼を適切に実施していなかった問題が 25年1月、兵庫県の郵便局で発覚した。貨物自動車運送事業者は法律上、運行時に車両状態やドライバーの酒気帯びの有無、疾病・睡眠不足などの有無を「点呼」する必要があるが、日本郵便では未実施があったほか、記録の改ざんなどが行われていた。社内調査では全国の郵便局3188カ所のうち、75%にあたる2391カ所で不適切な点呼の実施や、記録の改ざんなどの違反行為が確認されたという。これを受けて国交省は特別監査を実施、今月中に行政処分を下す予定だ。国交省は自動車貨物運送の事業許可を取り消す方針で、処分が下されれば日本郵便はトラックやバンなど約2500台が使えなくなる。これらの車両は拠点間の輸送に使われていたものであり、月12万便への影響が予想される。日本郵便はすでに、下請け企業や佐川急便など他社への委託を進めている。
また、乗務割の作成を行う一部の運行管理者に対して、資格証の返納を命じる方針だ。なお、3万台以上ある軽バンは届け出制であるため処分される可能性は低く、8万台超の原付バイクは貨物自動車運送事業法の対象外である。郵便局から各地への配送については、処分による影響が小さい。
主力事業は郵便・銀行・生保だが、郵便事業は赤字
日本郵政グループは主に郵便・銀行・生保の3事業を展開するが、郵便事業の業績は2期連続の赤字であり、今回の不適切点呼問題がさらに業績を悪化させる可能性がある。ここで一旦、グループの事業内容と関係性を整理しよう。資本関係は日本郵政の傘下に、日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険が位置する構造だ。日本郵便は日本郵政の完全子会社で、郵便・物流事業や郵便局窓口事業を展開する。郵便局窓口事業は、銀行業と生保業の委託を受けて事務手続きを行う事業だ。
銀行業は傘下のゆうちょ銀行が担う。24年度末時点の預金高は190兆円。200兆円の三菱UFJに続く国内2位の規模であり、みずほ・三井住友と続く。本来の銀行業は個人や企業の預金を他者に貸し出して金利で儲けるビジネスだが、ゆうちょ銀行では民業圧迫を防止するため法人融資は行っていない。個人融資のほか、国債や株式による運用益で利益を得ている。かんぽ生命保険は旧簡易生命保険から続く生命保険事業を展開し、終身保険や定期保険、学資保険などを提供している。 【次ページ】EC市場は伸びるも…郵便事業の利益圧迫の原因は?
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