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- 2023/06/22 掲載
緩和修正は10-12月が濃厚も、サプライズあり?カギは「円安」が握る理由
緩和修正は10-12月が最も適当
筆者は日銀によるイールドカーブコントロール(以下、YCC)の修正時期について、2023年10-12月期の金融政策決定会合が有力であると考えている。その予想に対するリスクは前倒し、すなわち7月の金融政策決定会合におけるYCC修正であると判断しているが、6月の金融政策決定会合はそのリスクを低下させたようにみえる。声明文の内容は4月の展望レポートからほとんど変化がなく、また植田総裁の記者会見も緩和修正をほのめかすような発言はなかった。植田日銀の慎重な姿勢に鑑みると、やはり政策修正は来期の春闘がある程度見通せるようになる10-12月が最も適当であると思われる。
ここで6月の金融政策決定会合を簡単に振り返っておく。まず、声明文に大きな変更はなく、以下の「核」の部分はそのまま維持された。
日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性が極めて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。(中略)必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる
総裁の発言に大きな変化なしも、物価の上振れを警戒
また記者会見における総裁の発言も重要な変化はなかった。物価見通しについては「消費者物価の前年比上昇率は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果によりひところに比べればプラス幅を縮小しているが、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から足元は3%台半ばとなっている。先行きは価格転嫁の影響が減衰し本年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと予想している」という以前からの見解が繰り返され、その上で「物価安定目標の達成にはなお時間がかかる」とした。
ただし細かい点を言えば、物価の上振れリスクを警戒しているように聞こえる発言が随所にあった。たとえば、「企業の価格設定行動が(上向き方向に)変化している可能性がある」、「原材料、エネルギー等の価格上昇の転嫁の動きが思っていたより強い」などといった言及があった。
また従来は「(物価上昇率は年度後半に)はっきりと低下していく」と比較的強めの表現をすることが多かったが、今回の語気はやや弱めの印象を受けた。物価見通しに微妙な変化が生じているのであろうか。 【次ページ】物価上昇率が2%を上回っても金融緩和を維持する理由
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