米経済活動、ほぼ横ばい　雇用安定も弱さの兆候＝地区連銀報告

Ann Saphir

[１５日　ロイター] - 米連邦準備理事会（ＦＲＢ）が１５日に公表した地区連銀経済報告（ベージュブック）によると、前回報告から経済活動にほとんど変化がなかった。３地区が「若干（ＳＬＩＧＨＴ）」から「控えめ（ＭＯＤＥＳＴ）」、５地区が変化なし、４地区が「わずかに軟化（ＳＬＩＧＨＴ　ＳＯＦＴＥＮＩＮＧ）」したとの認識を示した。一方、全ての地域が賃金の増加を報告した。

雇用は概ね安定していたものの、人員削減した企業が増え、労働市場の軟化を巡る懸念を強めるものだった。「大半の地区で、解雇や自然減による人員削減が報告された。需要の減退や経済の不透明感の高まりのほか、人工知能（ＡＩ）技術への投資増も一部では要因として挙げられた」と説明。

「一方、移民政策の変更によって複数の地区では接客業や農業、建設、製造業の労働力供給がひっ迫していると報告があった」とした。

９月の連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）会合では、政策金利の０．２５％ポイント引き下げが決定された。パウエル議長は今週、経済成長は想定よりもやや堅調な可能性が示されているものの、インフレと労働市場の見通しは、９月会合以降あまり変化していないとの見解を示した。

金融市場では１０月２８─２９日の次回のＦＯＭＣで追加利下げが決定されるとの見方が強いものの、ＦＲＢ当局者の意見は割れている。

政府閉鎖によって生じたデータの空白により、ベージュブックはＦＲＢの政策担当者の議論において通常よりも大きな重みを持つ可能性がある。

「多くの地区で米関税措置による投入コストの上昇が報告されたが、最終価格にどの程度転嫁されているかは地区によって異なっていた」と指摘。８月公表の報告で１００回使われていた「関税」という単語は今回の報告では６４回に減少した。

一方、トランプ米政権の移民取り締まり強化を背景とした労働力の減少、製品・サービスへの需要が不透明もしくは低迷しているとの新たな報告が見られた。

サンフランシスコ連銀は「建設業と製造業の複数の関係者から、労働者確保がより困難になったとの指摘があり、移民労働者の減少が要因として挙げられた」と報告した。

リッチモンド連銀は「サウスカロライナ州の住宅建設業者が価格上昇による需要減を報告し、解雇につながる可能性があると指摘した」と報告した。

クリーブランド連銀は「ある製造業者は、工業生産の回復を待つ間レイオフを延期していたが、これ以上人員削減を遅らせることはできないと述べた」とした。

「需要の減速、政策の不確実性、インフレが企業にとって最大の懸念事項として浮き彫りとなり、見通しは悪化した」（ダラス連銀）との声もあった。

消費については、国内消費全体が「わずかに減少」し、特に小売品が減少傾向にあると指摘した。１２地域のうち５地域で消費者支出が減少した。このうちの一つであるアトランタ連銀は「一部の小売業者は、来たるホリデーシーズンの商戦について慎重ながらも楽観的な見方を示しているが、中には関税導入によって近いうちに価格が上昇し、需要がさらに弱まる可能性があるとの指摘もある」と報告した。

セントルイス連銀も「低所得世帯と中所得世帯の両方でフードパントリーの利用が増加したほか、後払いサービスへの依存度が高まり、クレジットカードの延滞率も上昇している」と述べた。

今回の報告書は、１０月６日までに収集された情報に基づきサンフランシスコ地区連銀が作成した。米政府機関の一部閉鎖により、消費者物価指数（ＣＰＩ）など経済指標の発表が遅れている。