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- 2023/07/06 掲載
ディズニーも参戦、アップルのヘッドセット「Vision Pro」向けコンテンツの可能性
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/
アップルがUnityと提携する狙い
アップルが発表したVR/ARヘッドセット「Vision Pro」の発売予定時期は、2024年といわれている。これに向け現在、アプリとコンテンツ開発の環境整備が進められており、数カ月後には、デベロッパーやクリエイターによる開発プロジェクトが本格化する見込みだ。まず注目したいのは、アップルがVision Proのアプリ/コンテンツ開発に向けUnityと提携したというニュースだ。この提携により、Vision ProはUnityで開発されたアプリとゲームをサポートすることになる。
アップル独自のARエンジン「RealityKit」の上に、Unityのリアルタイムエンジンがレイヤー化される仕組みで、これに伴いUnityも新たに開発したPolySpatialというテクノロジーを導入する。
PolySpatialは、デベロッパーに対しポストプロダクションを制限するなどいくつかの制約を課すことになるが、Vision Pro向けのvisionOSアプリとの共存を可能にする。
アップルは、異なるプラットフォームのアプリが共存するこの仕組みを「Shared Space」と呼んでおり、将来的にUnity以外のプラットフォームにも拡張される可能性がある。
アップルとUnityの提携に関するサンプル映像が公開されているが、この映像では、Unityで開発されたARゴルフゲームアプリがリアルワールドに投影されつつ、もう一方では、アップルのMessageアプリが同時に稼働している様子が映し出されている。
Unityといえば、数年前に一大ブームを巻き起こした「Pokemon GO」の開発エンジンとしても知られており、同ゲームがVision Pro向けにリリースされる可能性も否定できない。
Vision Proは「Full Space」というモードがあり、これにより1つのアプリだけを表示し、他のアプリを非表示にして「完全没入体験」を生み出すことも可能だ。
アップルとの提携により、Unityアプリはパススルー機能やハンドジェスチャー機能などvisionOSの機能にアクセスできるようにもなるという。
ディズニーもVision Pro向けコンテンツ制作開始
アップルのデベロッパー向けカンファレンスである「WWDC 23」では、ディズニーがすでにVision Pro向けコンテンツ制作に乗り出していることが明らかにされた。ディズニーは、Vision Proの発売と同時に、動画配信サービス「ディズニープラス」で、Vision Pro向けの没入型コンテンツを配信する計画だ。どのような機能やコンテンツが開発/制作されているのか。WWDC 23では、ディズニーのボブ・アイガーCEO自ら、現在制作中のコンテンツに関するティザー動画を紹介している。
まず、スターウォーズをテーマとする3次元空間で映画を視聴する没入体験機能が紹介された。ティザー動画では、映画「マンダロリアン」をテーマとする空間の選択肢が表示され、視聴者がその1つを選ぶと、スターシップに乗り、とある惑星にワープするシーンが披露された。スターシップと惑星は、3次元VR空間となっており、視聴者はあたかもスターシップに乗り惑星にいるかのような体験を味わうとともに映画を視聴できる仕組みとなっている。
次に紹介されたのは、没入型のスポーツ番組視聴体験だ。さまざまなスポーツ番組を複数のディスプレイで表示するだけでなく、スポーツのリプレイを3次元で視聴できる仕組みが披露された。また、ナショナルジオグラフィック番組を360度で体験できる様子やミッキーマウスが飛び出る仕掛けなどもティザー動画で紹介されている。
アイガーCEOは「今後数カ月でさらに多くの情報を共有できる」と述べており、近々コンテンツ制作のさらなる詳細が明かされる見込みだ。
ディズニーによるVision Pro向け没入型コンテンツ制作の加速に伴い、傘下のスタジオでも没入型コンテンツ制作体制を整える動きが散見されるようになっている。
「スターウォーズ」シリーズや「インディージョーンズ」シリーズで知られるルーカスフィルムは、2012年にディズニー傘下となった映画スタジオ。同スタジオのCG部門であるIndustrual Light and Magic(ILM)では2015年に、没入型エンタメスタジオ「ILMxLAB」を新設し、Vader Immortalなどの人気VRゲームを手がけてきた。このILMxLABは2023年6月1日、同スタジオ名をILM Immersiveに変更したことを発表した。スタジオ名にイマーシブを加えることで、没入コンテンツ制作分野における存在感を明確にするのが狙いと思われる。 【次ページ】VRやARではなく「空間コンピューティング」
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