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  • 2023/07/19 掲載

米・ブーム(BOOM)の「超音速旅客機」の野望、マッハ1.7で飛ぶ 航空業界に新たな風

連載:「北島幸司の航空業界トレンド」

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2003年、チャーター便での事故をきっかけにその役目を終えた「超音速旅客機」。ここにきて米国の主導で改めて実現しようという動きが進んでいる。そのプロジェクトをけん引するのが、BOOM TECHNOLOGY(以下、呼称のブーム・スーパーソニック)。同社には、どのような計画と成功方程式があるのだろうか。

執筆:航空ジャーナリスト 北島 幸司

執筆:航空ジャーナリスト 北島 幸司

航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。

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ブーム・スーパーソニックは超音速機の開発を主導する
(出典:筆者撮影)

20年前に運航停止した「超音速飛行」

 人類が経験した超音速旅客機での商業飛行は、ロシア(当時ソビエト)が開発したツポレフTU-144と英仏開発のコンコルドの2機種のみである。1年に満たない期間の定期運航で終わったTU-144に比べて、27年もの長い期間を定期商用飛行したコンコルドであったが、チャーター便での事故をきっかけに2003年にその役目を終えた。

 そもそも超音速旅客機のコンコルドとは、マッハ2.04(2497㎞/h)で飛行する機体であり、現行の航空機の平均速度マッハ0.84(1028㎞/h)の約2.4倍のスピードで飛んでいた。

 開発当事国のブリティッシュエアウェイズとエールフランスでの運航のみとはいえ、定期便で就航していた実績は多大なものがある。航空大国の米国でさえ成し遂げられなかった超音速飛行であるが、ここにきて米国の主導で改めて実現しようという動きが進んでいる。

超音速旅客機の開発主導する「ブーム・スーパーソニック」とは

 コロラド州デンバーに拠点を置くブーム・スーパーソニックは、2014年に誕生した航空機メーカーで、米国の航空業界において革新的な航空旅行をもたらす超音速旅客機の開発に取り組んでいる。

 現行機の2倍となるマッハ1.7(2,080km/h)で飛行し、コンコルド以降の経済性が求められる航空業界において新たな展開をもたらすことが期待される。機体設計が確定し、4基のシンフォニーエンジンが採用されることも決定している。さらに、新たな製造工場はスーパーファクトリーと呼び、ノースカロライナ州グリーンズボロでの着工も発表された。ブーム・スーパーソニックはその将来ビジョンをパリ航空ショーで発表した。

米・ブーム(BOOM)の「超音速旅客機」レポート

 将来ビジョンとは、航空業界における超音速旅行の復活と発展にある。彼らは従来の航空旅行の限界を打破し、高速で効率的な移動を提供することを目指している。超音速旅客機の導入により、長距離の移動が大幅に短縮され、人々のビジネスや個人的な交流がさらに活発化することが期待されている。

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ブーム・スーパーソニック CEO ブレイク・ショル氏
(出典:筆者撮影)

ブーム・スーパーソニックの超音速旅客機 3つの特徴

 この新たな航空旅行の実現に向けて、ブーム・スーパーソニックは以下の要素に重点を置いていると発表した。

技術革新と性能向上:ブーム・スーパーソニックの機体は、最新の航空技術を駆使して設計されている。シンフォニーエンジンは高効率かつ低騒音な運転を実現し、燃費効率も向上させる。機体の軽量化や空力性能の最適化にも取り組んでおり、快適かつ効率的な超音速旅行を実現するための基盤を整えている。

経済性と持続可能性:ブーム・スーパーソニックは経済性と環境への配慮を両立させることを重視している。燃料効率の向上や持続可能な航空燃料(SAF)の使用により、2025年にはネットゼロカーボンの達成を計画する。また、騒音の低減も重要な課題であり、地域社会との調和を図るために取り組んでいる。

顧客体験の向上:ブーム・スーパーソニックは、超音速旅行における顧客体験の向上にも注力している。快適な座席、最先端のエンターテイメントシステム、高品質なサービスなど、旅行者の満足度を高めるための要素を組み込んでいる。また、シンプルな手続きや効率的な地上サービスも提供し、旅行全体のストレスを軽減する。 【次ページ】JAL、ユナイテッド航空、アメリカン航空が発注

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