- 2020/12/14 掲載
中国企業の米上場廃止リスク、ファンドの香港シフト促す
米下院は2日、米国の監査基準を順守しない中国企業の米上場を廃止できる法案を全会一致で可決した。同法案は今年すでに上院で可決されており、トランプ大統領の署名を経て成立する見通し。同法案の下、3年連続で米公開会社会計監視委員会(PCAOB)の監査基準を順守できなければ、米国内の証券取引所での上場が禁じられる。
大部分の中国企業は国家機密とみなされかねない情報の開示を国内法によって禁じられているため、こうした監査基準を順守できず、上場廃止に至るとみられている。
ボントベル・アセット・マネジメントのニューヨーク駐在ポートフォリオマネジャー、ブライアン・バンズマ氏は「リスクは本当に現実になろうとしている」と指摘。中国企業の米預託証券(ADR)に充てていた資金を香港に移し始めているとし、まずはゆっくりとコストが比較的低いルートを取っているものの、「リスクがさらに間近に迫れば早急な資金移転が可能だ」と語った。
アバディーン・スタンダード・インベストメンツの中国株担当責任者、ニコラス・イェオ氏は、自身のファンドも調整を加えていると説明。「上場先はそれほど問題ではない。香港に上場する同じ企業の株式を購入するだけであり、シフトはとても簡単だ」と述べた。
香港市場に重複上場する中国企業の数は増えている。
電子商取引大手アリババ、電子商取引(EC)大手のJDドットコム、オンラインゲームのネットイーズ、外食大手ヤム・チャイナ、教育サービスを手掛ける新東方(ニューオリエンタル)を含む米上場企業は既に香港にも上場している。
モルガン・スタンレーによると、EC大手のピンドゥオドゥオ、唯品会(ビップショップ)、動画共有サイトのビリビリを含む、その他20社以上も香港重複上場の資格があるという。
ファンドマネジャーらによると、米国と香港の上場株は完全に代替可能で、価格やコストの差もほとんどないという。
一方、最悪のシナリオとして、ADR業務に携わるある弁護士は匿名を条件に、中国企業の大規模な撤退は投資家に影響を及ぼし、米資本市場の競争力を損なう可能性があると指摘。「有名な成功企業が米取引所から撤退すれば、ロンドンや香港がより強力になり、米取引所よりも良い選択肢があるかもしれないとの考えが生まれるだろう」と語った。
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