エーザイのインパクト加重会計の事例:EBITDAが4割増しに

実は、このESG会計の分野では、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のジョージ・セラフェイム教授が率いるチームが「インパクト加重会計」として提唱し世界を先導している。インパクト加重会計では従来の財務会計上の利益に、環境・雇用・製品のインパクト、つまり社会に対する影響額を加減して、総合的な「インパクト加重利益」を計算する。
注意したいのは、柳モデルはESGの「PBR、株価への影響」を多年度の期差分析で見る一方、インパクト加重会計は「社会的インパクトの絶対値」を単年度で計算して従来の利益に加減する。つまり両者は似て異なるものであるが、「見えない価値を見える化する試み」という趣旨は同じである。この柳モデルとインパクト加重会計の2つのツールを使い分けて考えていく。
まず初めに、インパクト加重会計を採択したエーザイの事例から取り上げていこう。柳氏はこの事例について「HBSとの協業により、日本初のインパクト加重会計を用い、2019年のエーザイ単体の従業員の人件費を分析した結果、人件費約360億円に対して、男女格差などを調整すると、約270億円の雇用インパクト、つまり社会的価値を生み出しているという計算になりました」と説明する
図のように、270億円の雇用インパクトを生み出したことで、インパクト加重利益として、エーザイのEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は4割増しになるという結果を得た。こうした隠された社会的インパクトによる本源的な企業価値は多くの日本企業に眠っているのではないか。その点でインパクト加重会計は示唆に富む。
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