- 2026/01/13 掲載
皮肉すぎ…大学に「910万円」払っても就職難のZ世代…激変する「まさかの人気な職業」(3/3)
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
背景(1):卒業から1年経っても「58%が職探し」
米就職支援大手キックレジュメが2025年6月に発表した調査(調査実施は5月)によれば、2024年の5~6月に卒業した1277人の回答者のうち、半数以上の58%がまだフルタイムの仕事を探していた。米国のテレビや新聞・雑誌は、新卒者が1年以上職を探しても仕事にありつけないようなケースを繰り返し報じているが、逸話的な実例は大規模調査の結果と矛盾していない。実際、米労働統計局がまとめた22~27歳の大卒者の失業率は2025年3月に5.7%と、同月の全国平均4.2%と比較して1.5ポイントも高かった。米国はつい最近まで、「採用も解雇も低水準」という状況が続いてきたが、企業による人員削減がじわじわと増加している兆候が見られ、新卒者にはさらに厳しい状況となっている。
こうした状況もあり、米NBCニュースは1000人の米国人成人を対象にした10月の世論調査で、半数以上の63%の回答者が「大学教育は元が取れない」と回答したことを明らかにした(図6)。
2013年に「元が取れない」とした人が半数以下の40%であったことと比較すると、私学に通学する平均コストが2024~2025年の学年度に5万8,600ドル(約910万円)と高騰が止まらない中、若年層の仕事選びに重要な役割を果たすと見られてきた大卒資格の価値が、社会的に大きく下がっていることがわかる。
「今、求人に応募することは、底なしのブラックホールに履歴書を投げ捨てるようなものだ」との分析は、あながち誇張とは言えないのだ。米就職支援企業ベントリールイスのルイス・マレー氏は、「大学を卒業すれば就職が保証されるという暗黙の了解は過去のものだ」と指摘する。
背景(2):新卒者が恐怖する「AIの脅威」
Z世代の「受難」はさらに続く。ChatGPTなどLLMが日進月歩の進化を遂げる中、雇用主がエントリーレベルの仕事をAIに任せ、新卒者の採用を控え始めたことを示唆するスタンフォード大学の研究が注目を集めている。さらに興味深いことに、OpenAIがChatGPTをリリースした2022年を境に、S&P500株価が右肩上がりで上昇する一方、求人数は急落する「K字型」を形成している(図7)。
実際に、2022年における失業者1人当たりの求人件数は図8のように約2件であったが、2025年には1件にまで落ち込んでいる。
もちろん、「AIが新卒者の仕事を奪う」との言説は現段階では大いに誇張されたものだ。米著名経済ジャーナリストのデレク・トンプソン氏が説明するように、企業が新規雇用を控え始めた時期は、米連邦準備制度理事会(FRB)が2022年3月に開始した利上げによる経済活動の低下とぴったり符合している。そのため、AIではなく、引き締め的な金融政策が採用を抑制させていると考えられるのだ。
加えて現在は、新型コロナウイルスのパンデミック期における過剰採用の調整期であること、景気のサイクルがもたらす循環的失業が増加していること、そしてトランプ政権の関税政策による経済の不透明さで企業が新卒者採用を控えていることが大きい。米コンサル大手のマッキンゼーが指摘するように、AIが人間の仕事を大量に奪っているわけではないのだ。
それでも、米フォーチュン誌など有力メディアが「新卒者の仕事がAIに脅かされている」との言説を盛んに取り上げる中で、Z世代の大学生や新卒者にとって、AIが大きな脅威に映っていることは間違いないだろう。
このような状況の下、AIに代替されず、長期的な安定性を確保できると見られているブルーカラー職への就職需要は今後さらに伸びていきそうだ。
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