- 2026/01/22 掲載
もう限界…建設・物流で「人手不足倒産」過去最多、2026年も続く「現場崩壊」の正体(2/3)
【理由1】残業前提をNGにした「働き方改革」
まず背景として押さえるべきが「2024年問題」だ。働き方改革関連の時間外労働の上限規制について、建設業や自動車運転の業務などに設けられていた猶予期間が2024年3月末で終わり、2024年4月から規制が適用された。厚生労働省は、自動車運転の業務では特別条項付き三六協定を結んだ場合、従来は実質的に青天井だった時間外労働の上限を年960時間とした。一方、他業種で適用される一部の規制(たとえば、月45時間を超えられるのは年6カ月まで等)は適用されないと整理している。このため、長時間労働に依存した働かせ方は取りにくくなり、上限の枠内で運行を組み替えることが求められるのだ。
建設業については、上限規制を他の業種同様に720時間で適用。ただし、災害復旧・復興の事業では、時間外労働と休日労働の合計について月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内とする規制が適用されないなど、例外がある。長時間労働に頼った供給力が縮み、しわ寄せが中小の現場に集中しやすい構図が生まれている。
現場の制約が強まると、倒産は建設・物流の内側にとどまらない。製造業にとっても、輸送の遅れは部品の欠品や在庫の積み増しにつながり、工場の稼働計画を揺るがす。工場新設や設備更新を担う建設の停滞は、投資計画の後ろ倒しを招く。人手不足倒産の増加は、供給網の“薄さ”が露見した結果でもある。
なお時間外労働の上限規制は「月45時間・年360時間」が原則で、臨時的な特別の事情がある場合に限り特別条項付き三六協定で上限を引き上げる仕組みだ。
【理由2】倒産を防ぐ手段を失っていた「経営面の問題」
倒産が増えたことは事実でも、「不可抗力だったのか」「経営の問題だったのか」で見え方は変わる。人手不足倒産の多くは、単発の事故ではない。採用難が続く局面で、賃金・労務管理・生産性のどこかに“遅れ”があった企業が、制度変更や人件費上昇を契機に一気に表面化したとみるのが自然だ。防げたかどうかを見極める上で重要なのは、企業が「人手不足」を外部要因として片付けず、経営指標として扱えていたかだ。
物流であれば、積載率や待機時間、荷待ち・荷役の発生地点、運行あたりの粗利といった要素を分解し、どこに無駄があるかを可視化する。建設であれば、手戻りを生む工程、段取り替えの頻度、資材搬入の詰まり、現場監督の負荷といった“ボトルネック”を特定する。これらは個別最適の改善に見えるが、少人数でも回すには不可欠な前提になる。
加えて、取引構造の力学も無視できない。荷主や元請けが強い立場にある場合、下請け側は短納期・低単価・突発対応を抱え込みやすい。残業で吸収してきた業務が吸収できなくなれば、品質や納期で事故が起き、信用不安から受注が細る。人手不足倒産は、労務の問題というより、取引条件の歪みが限界に達した結果でもある。
鍵は、現場の制約を数字に置き換えていたかどうかにある。物流であれば、ドライバーの拘束時間や休息時間、配車計画の組み直しによって「運べる量」が減る可能性を、売上や粗利の計画に落とし込めていたか。
建設であれば、工期の見直し、段取りの標準化、協力会社との役割分担の再設計などを、元請け・施主との交渉材料にできたか。ここを実行できていなければ、残業で吸収していた“ズレ”を吸収できなくなる。
もう1つの分岐は価格転嫁だ。人件費が上がっても単価が上がらない、あるいは上げられない企業は、採用競争でも不利になりやすい。賃上げできず人が集まらず、回らず、さらに単価が取れないという悪循環が起きる。
TDBも、今後は大企業の賃上げペースが加速する中、追随できない小規模事業者を中心に「賃上げ難型」の人手不足倒産が懸念されるとしている。制度対応の遅れと価格転嫁の弱さが重なると、倒産は「防げない」のではなく「防ぐ手段を失っていた」と言い換えられる。 【次ページ】2026年も「人手不足倒産」増える? リスク高める「3条件」
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