- 2026/01/22 掲載
もう限界…建設・物流で「人手不足倒産」過去最多、2026年も続く「現場崩壊」の正体(3/3)
2026年も「人手不足倒産」増える? リスク高める「3条件」
次に問われるのは、同じ現象がどこまで広がるかだ。TDBの集計は建設・物流に限らず、労働集約型の業種で人手不足倒産が増えていることを示している。2025年には老人福祉事業、美容業、警備業、労働者派遣業などでも増加が確認された。共通点は「需要があっても、供給(人)で詰まる」ことにある。倒産リスクを高める条件は大きく3つに整理できる。
第1に、特定のキーパーソンに依存する体制、つまり属人化だ。10人未満の企業であれば、現場を回す技能者や運行の要となる担当者が抜けるだけで稼働が止まる。
実例として、福井県の一般貨物自動車運送業「北陸キャリー」は、ドライバーの退職などで人手不足が慢性化し、事業継続の見通しが立たず破産手続き開始決定に至った。「誰が抜けても回る」設計ではない小規模事業者ほど、退職がそのまま“操業停止の引き金”になりやすい。
第2に、工程・運行の“余白”を残業で埋めてきた業務設計だ。上限規制が効くほど、吸収できない遅延や突発対応が増え、品質事故や契約不履行のリスクが上がる。特に物流は、2024年問題(時間外労働の上限)を境に「残業で埋める」モデルが効きにくくなった。
第3に、価格交渉の弱さである。価格転嫁できない企業は賃上げ原資を確保できず、人材市場でさらに不利になる。たとえば冷凍・生鮮食品の配送を手掛ける福岡県の「T.M.U物流」は、燃料費高騰に加え、2024年問題や人手不足による人件費の高騰などのコスト増が赤字を拡大させ、破産手続き開始決定に至った。
ここに金利・資材価格・燃料費などの変動が重なると、資金繰りの余裕は一段と薄くなる。人手不足倒産は「人が足りないから」ではなく、「人が足りない状況に耐える設計になっていないから」増えるのだ。2024年問題は、その弱点を露呈させるテストになった。人口減少や労働市場の流動化が進む中、人手不足倒産の増加傾向は2026年も継続する可能性が高い。
企業が実行すべき「4つの構造変化」
乗り越え方は、精神論ではなく“設計のやり直し”になる。以下では企業が構造の変革を進めるべき4点を挙げる。第1に、現場の制約を可視化し、受注の取り方を変えることだ。受けたい仕事をすべて受ける発想から、工期・運行・人員の制約に合わせて受注を選別し、採算を確保する。
第2に、標準化と分業で属人性を減らす。手順の整備、教育の短縮、段取りの共通化は、少人数でも回る確率を上げる。
第3に、価格転嫁の土台をつくる。単価交渉は「お願い」ではなく、制約とリスクを定量で示し、継続供給の条件として提示する必要がある。
第4の制度対応も重要だ。時間外労働の上限規制の枠組みを前提に、三六協定や労務管理の運用を整えることは、コンプライアンスにとどまらず、現場の生産性を再設計する起点になる。
2024年問題は、建設・物流が抱えていた“長時間労働で帳尻を合わせるモデル”の限界を示した。倒産増は終点ではなく、産業構造の転換を迫るサインとして受け止めるべきだ。
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