• 2026/03/07 掲載

AKB曲のジャケットデザイナーが明かす「センスの正体」──誰でもできる3つの鍛え方

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生成AI隆盛の今、扱う人間の「センス」も重要な要素と言える。しかし、「自分にはない」と諦めていないだろうか。AKB48「ヘビーローテーション」のCDジャケットや松竹「十八代目 中村勘三郎 襲名披露」ポスターなどを手がけたクリエイティブディレクターでアートディレクターの秋山具義氏は、センスとは生まれつきの才能ではなく、誰でも日常の中で磨けるスキルだと断言する。街を歩くとき、SNSを見るとき、会話をするとき──。実は、あらゆる場面が「センスを鍛える絶好の機会」になっている。秋山氏が明かす3つのフェーズとは何か。明日から実践できる具体的な方法を、第一線で活躍するプロが解説する。
執筆:クリエイティブディレクター/アートディレクター 秋山 具義

クリエイティブディレクター/アートディレクター 秋山 具義

デイリーフレッシュ代表取締役、クリエイティブディレクター/アートディレクター。日本大学藝術学部デザイン学科客員教授。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。1966年秋葉原生まれ。1990年日本大学藝術学部卒業。同年、I&S(現I&S BBDO)入社。1999年デイリーフレッシュ設立。広告キャンペーン、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行う。主な仕事に、東洋水産「マルちゃん正麺」広告・パッケージデザイン、日本フェンシング協会「新国章」デザイン、松竹「十八代目 中村勘三郎 襲名披露」ポスター、立命館大学コミュニケーションマークデザイン、AKB48「ヘビーローテーション」CDジャケットデザインなど。「日本パッケージデザイン大賞2017」にて「マルちゃん正麺カップ」が金賞受賞。著書に『世界はデザインでできている』『ファストアイデア25』がある。2016年より「食べログ」グルメ著名人としても活動。

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街を歩くとき、SNSを見るとき、会話をするとき──。センスは誰でも日常の中で磨ける
(Photo/Shutterstock.com)
※本記事は『こうやって、センスは生まれる』を再構成したものです。

センスとは“生まれつき持っているもの”ではない

 「センスのある人」と聞くと、私たちはつい“生まれ持った感覚”を思い浮かべます。

 「天賦の才能」や「生まれつき持っているもの」というイメージが強い言葉ですが、実際のところ、センスとは才能ではなく鍛えられる力です。

 それは、誰でも日常の中で磨くことができるスキルであり、「偶然のひらめき」ではなく、「知覚・組み替え・表現」という3つの仕組みを繰り返すことで育ちます。

 言い換えれば、センスとは「感覚の積み重ねの結果」であり、再現可能な技術なのです。

日常に潜む“小さな疑問”があなたの「見る力」を変えていく

フェーズ1:「知覚」── 世界の「普通」と「半歩先」を知る
 センスを鍛える第一歩は、「世界の見方」を変えることです。

 つまり、見慣れた日常の中に潜む“違い”を感じ取る感覚を育てること。

 センスのある人は、同じ景色を見ても、そこに他人が気づかないズレや違和感を見つけることができます。

 たとえば街を歩くとき。

 ポスターのデザイン、カフェの照明、駅の案内板の配置、店のショーウィンドウ。

 どれも「なぜこうなっているのか?」と問いかける練習の場になります。

「この広告はなぜ目を引くのか?」

「このカフェはなぜ落ち着くのか?」

「なぜ人はこの道で立ち止まるのか?」

 こうした小さな疑問を意識的に持つことで、私たちの“見る力”が変わっていきます。

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【画像付き記事全文はこちら】
「なぜこうなっているのか?」小さな疑問を意識的に持つことで“見る力”が変わっていく
(Photo/Shutterstock.com)

 観察は分析ではありません。分析は「答えを出す」行為ですが、観察は「違和感を拾う」行為です。

 この違和感の感度こそが、センスの最初の芽になります。

「この人のポスト、なんで反応が多いんだろう」と考えると…

 SNSの世界にも「知覚のトレーニング」は無限にあります。

 たとえば、似たようなテーマの投稿が並ぶ中で、「なぜこの人のポストだけ反応が多いのか?」を考える。

 写真の構図、言葉のリズム、余白の使い方、絵文字の数、どれを取っても“センスの違い”を学ぶヒントが詰まっています。

 同じ情報を発信しても、フォロワーの心を動かす人と、スルーされる人がいる。

 この差を意識して観察するだけでも、「半歩先を見る目」は確実に磨かれます。

 もう1つの知覚トレーニングは、建築や空間に身を置くこと。

 たとえば、ホテルのロビー、図書館、美術館。

 照明の色、椅子の配置、天井の高さ──これらはすべて「空気の温度」を作るデザインです。

 センスとは、見た目だけでなく「空気の感じ方」にも宿る。

 なぜこの空間に入ると落ち着くのか、なぜあの場所では肩がこわばるのか。

 それを感じ取る力を磨くと、デザインにも会話にも“温度の調整力”が生まれます。

 ファッションにもセンスの観察法があります。

 街を歩きながら、「多くの人が取り入れている色」「少数派の素材」「誰も着ていない形」に注目する。

 そこに“次のトレンド”が隠れています。

 音楽なら、流行の曲と昔の名曲を聴き比べてみる。

 メロディよりも「間」「抑揚」「余白」に注目すると、“時代の感情”の変化が見えてきます。

 知覚とは、目だけでなく耳、肌、体温、匂い、五感すべてを使って「世界を味わうこと」なのです。

ほんの数秒の違いでも、印象はまるで別物に

フェーズ2:「組み替え」── 世界の「普通」と「半歩先」を組み替える
 「知覚」で集めた情報は、それだけではまだ“素材”にすぎません。

 そこに命を吹き込み、価値へと変えていくために必要なのが「組み替える力」です。

 センスとは、異なる要素を新しい文脈で結びつける「編集力」のこと。

 この組み替えのセンスを磨くことで、発想は一気に広がり、“自分にしかできない考え方”が形になります。

 広告の構成に映画のストーリーテリングを応用する。

 料理の盛り付けから空間デザインを学ぶ。

 音楽のリズムから文章のテンポを整える。

 こうした異分野の「要素の横断」が、クリエイティブな発想の源になります。

 センスのある人は、目の前の素材を「足し算」するのではなく、“関係性を再設計”しています。

 「AとBを組み合わせる」ではなく、「Aを見せた後にBを出す」──この順番の入れ替え1つで、伝わり方も感情の動き方も変わるのです。

 たとえばプレゼンで、「結果」から話すか「経緯」から話すか。

 あるいはSNS投稿で、「ビジュアルで理解させるか」「言葉の補足で強く見せるか」。

 ほんの数秒の違いでも、受け手が抱く印象はまるで別物になります。

 組み替えとは、素材そのものを変えることではなく、“流れのリズム”を変えて受け手の心を動かす作業です。 【次ページ】失敗した経験は「再利用可能な情報」に溢れている
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