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  • 2015/04/07 掲載

A10ネットワークス 川口亨 社長:SDNとセキュリティに注力、A10 Harmonyで市場を拡大

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2015年1月1日付けでA10ネットワークスの日本法人代表に就任した川口 亨氏は、IBMやUNIVACなどの汎用コンピュータ全盛時代から、この業界に身を置く重鎮だ。大手製造業分野への販売事業を統括した後、製造系の製品設計や開発支援を手がける複数の企業を経て、4年前から再びコンピュータ&ネットワーク業界に戻ってきた。川口氏は、これまでの豊富な経験を活かし、好調なA10をどのようにドライブしていくのだろうか? 同氏に、新しい経営戦略と、新製品の動向、今後の展開などについて話を聞いた。

日本重視のカスタマードリブンでネットワークの厳しい品質を支援

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A10ネットワークス
日本法人代表 兼 社長
米国本社バイスプレジデント兼務
川口 亨 氏
──1月1日に新社長として就任されました。その経緯とご自身のミッションについてお聞かせください。

川口氏:A10に魅力を感じたのは、大きく3つの理由があります。

 まず一般的な話として、海外ビジネスを国内で展開する際は、やはり海外流と日本流のビジネスでギャップが生じます。たとえば、米国の多くの企業は、買収やビジネスの変化に伴ってトップが変わり、マネジメントが一変することは当たり前のことです。日本市場では、そのバランスを縮めて価値を訴求していくことが難しいのですが、A10の場合には創業者のリー・チェンが現在もCEOとして活躍しています。

 ビジネス中心とテクノロジー中心のCEOの相違は極めて明確です。リー・チェンは、利益追求のみを目的とせず、自らの夢を追い続け、テクノロジーを重視しながら、ビジネスを展開しています。私は、そういうビジョンや思想信条を持つトップと仕事をしたいと考えていました。

 2つ目の理由は、このビジョンに関わるところです。A10は単なるソリューションベンダーではありません。ロードバランスをはじめとしたADC・セキュリティ・IPv6移行など、すべてをハンドリングできるプラットフォーム、独自OS「ACOS」(Advanced Core Operating System)を有しています。ネットワークの世界で、新技術を統合・管理していくために必要なコアテクノロジーを持っていることは極めて重要なことです。

 そして3つ目の理由は、A10を支える“人”と“体制”が素晴らしいことです。すべての社員が同じ方向でお客さまとじっくり向かい合って、ともに価値を見出していくメンタリティも魅力の1つでした。A10には、テクノロジーを重視しながら、お客さまやパートナー様を主体とした“Customer Driven Innovation”を支える組織体制があります。製品を売るだけの企業とは異なると感じました。

──かつて製造業の製品設計・開発支援を手がける企業でも、その手腕を発揮されました。A10はエンタープライズ向けも注力していますが、どのような展開をお考えでしょうか?

川口氏:実は、製品開発という観点からは、製造業をはじめとするエンタープライズ向けもサービスプロバイダ(MSP/ISP)などもそれほど大きな差はないと感じています。日本ではいずれも、特に品質を重視する傾向があるからです。

 製品を安定的に供給するには、製造ラインは絶対に止められません。製造業では、問題が後に発生するほどシワ寄せがきて、その修正に時間もコストもかかってしまいます。そのため可能な限り、初期段階で問題点を洗い出せるプロセスをつくり込む必要があります。しかし、それも品質が伴わなければ確立することはできません。

 ネットワークビジネスも同様です。データトランザクションが停止したら大変なことになります。従来まで内部ネットワークや専用線で完結していた製造業にも、いまクラウドの波が押し寄せています。もしミッションクリティカルなIT系で品質の問題がクローズアップされれば、我々にも大きなビジネスチャンスが生まれるでしょう。

 A10に課せられる責任は、機能・性能のみならず、品質・継続性・安定性を支えることです。米国のA10の開発チームも日本市場の品質へのこだわりを熟知しており、それを品質向上に生かしています。こういった柔軟性が、A10のよき風土であるように思います。

「A10 Harmony」をベースとした新戦略。ACOS 4.0でサポートするSDN対応とセキュリティ強化

──先ごろACOSを4.0にバージョンアップされました。この狙いと2015年度の新製品戦略についても教えてください。

川口氏:まず製品戦略として、ACOS 4.0から「A10 Harmony」というアーキテクチャーを発表しました。

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A10 Harmonyで提供されるサービス
(資料提供:A10ネットワークス)


 これには「お客さまが必要なときに、必要なポリシー(設定)を、いつでも適用できるプラットフォームで提供する」という目的があります。A10 Harmonyの枠組みで提供される製品ラインは、現時点で、高速なアプリケーション配信を実現するThunder ADC、キャリアグレードネットワーキングゲートウェイであるThunder CGN、DDoS防御専用アプライアンスであるThunder TPSがありますが、製品提供形態としては、ハードウェアアプライアンスから、仮想アプライアンス、そしてハイブリッドまで幅広くご用意していこうと考えています。

 今回のACOS 4.0で特にフォーカスした点は、SDNとセキュリティに関する機能です。SDNについては、さまざまな自動化に関するプログラマビリティへの対応を重視しています。またSDN/オーケストレータ連携も目玉の1つです。OpenStackだけでなく、シスコシステムズさんが取り組んでいるSDNのアプローチ「Cisco Application Centric Infrastructure」(Cisco ACI)からも、A10の製品を統合管理できます。Cisco ACIとA10の連携はニーズが高く、シスコ側とも密接に連携をとっています。

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Cisco ACI L4-L7サービスインテグレーション
(資料提供:A10ネットワークス)


 一方、ADCも進化をとげており、高度なセキュリティ機能が盛り込まれるようになりました。こちらは機能を1つに集約したユニファイドサービスの方向を考えています。データセンタ間で高速かつセキュアなコネクションを実現するIPsec VPN、WAF(Web Application Firewall)、AAM(Application Access Management)のほか、「SSLインサイト」などの機能も強化しました。SSLインサイトは、SSL通信内に潜む脅威への対策として使用される機能ですが、A10はSSL暗号化/復号処理をADC側で行うことにより、SSLトラフィック検査時の高負荷をセキュリティ製品に代わってオフロードします。ACOS 4.0からは、アクセスサイトのカテゴリ別に、たとえば金融系であれば除外するなど、機能を柔軟にコントロールできるようになりました。

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SSLインサイトの強化
(資料提供:A10ネットワークス)


──さまざまなベンダーとの連携によるA10 Security Allianceも進めていますね。

川口氏:はい。A10 Security Allianceは、我々とセキュリティベンダー各社との共同検証を実施し、お客さまに安心してお使いいただけるエコシステムをつくることを目的に発足したものです。いまお話したSSLインサイトのパートナーシップも、IBMさんやファイア・アイさんなどのセキュリティベンダーと連携して実施しています。

──今後、国内でA10のビジネスをどうやって広げていくお考えでしょうか?

川口氏:現在展開している営業戦略やビジネス戦略を大きく変更することは考えていません。いまの流れを踏襲しながら、改善が求められる点は改善していきます。これまで通り、大手キャリア/ISP系のお客さまのご支援に注力していきますが、今年度から来年度にかけてエンタープライズ分野へのアプローチをさらに強化していきます。

 また、従量課金を可能にする「Pay-as-you-Go」のようなクラウドマーケットのビジネスモデルへの対応も進めていきます。クラウドが本格化していくなかで、ADCソリューションのニーズは大きなビジネスチャンスになると考えています。そのうえで、さらに数年後をめどに、新ビジョンであるA10 Harmonyによる機能統合を実現したいと考えています。

──最後になりますが、4月15日(東京)と4月23日(大阪)に開催される「A10 Forum 2015」の見どころを教えていただけますか?

川口氏:A10 Forumでは、今後のA10のビジネス戦略や、それを支える個別テクノロジーとして、クラウド・SDN・セキュリティ・ADCソリューションを切り口とした詳しい内容についてご紹介させていただきます。さらに将来につながるA10 Harmonyに関しても、ご案内させていただく予定です。加えて、A10 Forumはお客さまの情報交換の場としてもご活用いただきたいと思っています。今回は、ヤフーさまやソフトバンクモバイルさま、グリーさまによる豊富なユーザー講演もご用意しています。ぜひご来場ください。

──本日はありがとうございました。

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