- 2025/12/11 掲載
インタビュー:26年も日本株の強気継続、日銀政策の「後手」がリスク=ブラックロック
[東京 11日 ロイター] - ブラックロック・ジャパンは、2026年の日本株に強気のスタンスを継続する。米国で経済が底堅く、金融緩和が継続する中でリスク資産に好ましい環境が続くとの見方が背景にある。デフレからの脱却など構造変化が進む日本については、グローバルポートフォリオの中で最もオーバーウエートしている投資スタンスを継続する。一方、日銀の金融政策が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」など政策面のリスクがあるとの見方も示した。
地口祐一チーフ・インベストメント・ストラテジストがロイターのインタビューで述べた。
地口氏は、米国を中心に経済が上振れていくとみる。失業率が低い中で、賃金が着実に伸びる組み合わせは「米国の歴史上でも非常に良好な状態」と指摘。個人消費は今後も底堅く推移するとみている。日本や欧州も、財政・金融ともに引き締めに大きく舵を切ることは難しく、来年にかけては世界的に投資家がリスクを取りやすい局面だという。
とりわけ日本企業は、デフレ環境下とは異なり、コスト上昇分をある程度、安定的に価格に転嫁できるようになってきたと指摘。企業の売上高は2─3%の伸びを確保しており「数量が大きく落ち込まない限り、営業利益の伸びにつながる」との見方を示した。
米関税の悪影響が後退していく中で、TOPIXの1株当たり利益(EPS)は10%以上の伸びを見込むという。とりわけ海外投資家にとって政策の安定は非常に大事だと指摘。この点、高市政権は、野党の主張も取り入れる姿勢を示しており「政策の安定性は保たれそうだ」とみている。
<日本株高の柱はハイテク、金融に>
日本株の柱となるのはハイテク株や金融株だという。
ハイテク株は、米エヌビディアに代表される画像処理半導体(GPU)関連株の短期的な値動きだけに目を奪われるのではなく、その背後にある設備投資の波と、その受益企業、さらにその先のサービス企業まで含めて見渡すことが必要との見方を示す。
AI(人工知能)関連では来年も米大手ハイテク企業を中心に堅調な設備投資が継続するとみている。日本企業は半導体製造装置やデバイスを手掛ける企業が多く「その(巨額投資の)受け皿になる」と地口氏は指摘する。アドバンテストや東京エレクトロン、ソフトバンクグループといったハイテク株の構成比が高い日経平均は、指数全体としても上昇しやすい構造とみている。
金融株は、イールドカーブ(利回り曲線)の「ベアスティープ」化を前提に株高を見込む。仮に10年金利が2─3%となっても「実体経済への影響はあまりネガティブでない一方、リフレ的な環境になる中では企業活動には総じて良い」との見方を示した。すでに国債を保有している金融機関は金利上昇で含み損が生じるリスクがあるものの、メガバンクは金利リスクの観点からデュレーションを短期化しているとして「10年金利3%でも、さほど大きなインパクトにはならないのではないか」とみている。
<政策面で「後手」のリスクも>
株高にとってのリスクは、政策面での動きが想定されるという。その1つとして日銀の金融政策が市場や経済の状況変化への対応で遅れる「ビハインド・ザ・カーブ」に陥るリスクを挙げた。
市場では日銀による12月の追加利上げの織り込みが進んでいるが、予想通り利上げした場合、政策金利は0.75%となる。地口氏は「インフレ率3%に対して0.75%の政策金利がどうなのかという議論が出てくるだろうが、コンスタントな利上げには、今の政権下では逆風の要素もあるのではないか」とみている。
市場では、高市政権の財政拡張路線と利上げの整合性の乏しさが意識され、先行きの利上げペースは緩慢とみられている。「来年の後半ぐらいにインフレが上振れてきたとき、政策金利が0.75%のままだと後追いとなり、債券も株も通貨も、市場が一番嫌う状況となるリスクがある」と地口氏は指摘した。
一方、住宅価格や家賃の高騰を防ぐため、外国人や外国企業による不動産購入への規制や課税を強化する議論が浮上している。こうした規制や課税強化が現実化する場合、「短期的に利益確定売りを招いたり、資金の引き上げがあるかもしれない」との見方も示した。
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