• 2025/12/12 掲載

インタビュー:日本の買収大型化も、保険資本活用プライベート融資で=ゴールドマンM&A最高執行責任者

ロイター

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Miho Uranaka Anton Bridge

[東京 12日 ロイター] - ゴールドマン・サックスでグローバルM&A(合併・買収)最高執行責任者(COO)兼M&Aストラクチャリング部門トップを務めるデービッド・ダブナー氏はロイターとのインタビューで、保険会社の長期安定資本を活用する新しい資金調達手法の広がりが日本企業による大型買収を後押しし始めていると語った。

保険マネーを背景に持つプライベート融資(クレジット)の活用により「これまで(企業が)手が届かないと思っていた案件も、今は現実的なものになってきている」という。

日本で広がりが期待されているのは保険会社などの長期資金を活用する「ハイグレード・ソリューションズ」で、伝統的な株式や負債に加えてプライベートクレジットで構成するハイブリッド型ファイナンスだ。米国でも比較的最近生まれた手法で、格付機関や会計上の観点から資本性を認められる一方で資本コストを抑えられる点が特徴で、買収側は株式や優先株より低コストで資金を調達できる利点がある。

ダブナー氏は、株価の上昇と潤沢な資金環境を背景に経営陣の自信が高まる中、小規模な買収ではなく、企業を変革するような大型M&Aに踏み出す企業が増えているとし、多様化する手法を活用することも大型買収の実現可能性が高まっている要因の一つと述べた。

プライベート融資とは、銀行融資ではなく保険会社や年金基金などの機関投資家が企業に直接資金を提供する仕組みで、海外では低コストかつ柔軟な資金調達手段として存在感を高めており、ファンドなどを通じて供給されている。

新型ファイナンスは投資適格級企業の買収案件に適しており、住友商事が三井住友フィナンシャルグループ傘下のSMBCアビエーション・キャピタルと組んで実施した、米航空機リース大手エアリースの負債を含めた企業価値4兆円超の買収が、日本企業による象徴的な活用事例となった。両社が株主となるほか、保険資本を背景に投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントとブルックフィールド・アセット・マネジメントがプライベートクレジットを通じて出資した。ゴールドマンは同案件のアドバイザーを務めた。

ダブナー氏は、プライベート・エクイティ(PE)ファンドが潤沢な資金をもとに積極的に投資機会を探していると指摘。日本企業が規模の拡大やポートフォリオ再編を進める中で、こうした新たな資金調達手法は成長投資を支える要因になり得ると期待しているといい、「(エアリースの)案件の公表以降、グローバルレベルで案件パイプラインが拡大している」と明かした。

ゴールドマンは米国のストラクチャード・ファイナンスチームを中心に、ハイグレード・ソリューションズを世界の顧客に展開している。ダブナー氏は「この仕組みはM&Aだけでなく、データセンターや電力といったAI(人工知能)関連インフラ投資にも応用できる」とした。

同氏は、グローバルM&A市場の見通しについても触れ、「2025年の世界のM&A取引額は約4兆5000億ドル超と、過去20年で2021年に次ぐ高水準になる見通しで、活動の勢いは今後2ー3年続く」とみる。特に市場の大きな米国では、金利低下による金融環境の改善、財政刺激策や規制緩和などがM&Aにとって追い風だ。また、独禁当局が取引案件の承認に前向きな姿勢になっているという。

ゴールドマンは9日、日本企業によるM&A活動が活発化する中、日本で初めてM&Aコンファレンスを開催。ダブナー氏は開催地の東京で10日、ロイターのインタビューに応じた。ディールロジックの集計によると、12月2日時点でゴールドマンはグローバルM&Aリーグテーブルで首位に立っている。

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