- 2026/02/06 掲載
再送-インタビュー:日銀は積極的な利上げ必要、為替介入の効果も持続=中尾元財務官
Yoshifumi Takemoto Makiko Yamazaki
[東京 6日 ロイター] - 元財務官の中尾武彦氏(国際経済戦略センター理事長)はロイターの取材に応じ、円安の一因は利上げに慎重な日銀の姿勢にもあるとして、実質金利がマイナスの状態を脱するため積極的な利上げを提唱した。円安に歯止めをかけるため為替介入をしても、日銀が利上げを確実に進める姿勢を示さないと効果はないとした。米政府内に、日本や韓国の通貨安を問題視する声があるとの見方も示した。
中尾氏は、国際通貨基金(IMF)が試算する円の購買力平価1ドル=90円台に比べて今の日本円は極端に安いと説明。「日本のドル建ての国内総生産(GDP)は小さくなって、国際的な存在感も低下している。不動産や企業も海外に買収されやすくなっており、物価高で消費は減退するなど、行き過ぎた円安は国力を損なっている。円安で輸出企業・大企業の収益が高まり株価は上がるが、輸入企業や一般国民には悪影響が多い」と述べた。
円安が続く最大の理由として中尾氏が挙げたのが、「日米金融政策の非対称性」だ。「米国はコロナ禍後ビハインド・ザ・カーブ(周回遅れ)と批判されつつも、物価上昇に応じて急速に政策金利を引き上げた。日本の物価上昇率に比べて日銀は利上げに慎重すぎる」と語った。
「すでにインフレになっているにもかかわらず、『基調的なインフレ率は2%に達していない』、『米関税の影響を見極めたい』など、様々な理由で利上げを遅らせている」と指摘。「2024年7月の利上げ後に株価が暴落したため、利上げに慎重になっている可能性があるが、金融緩和と円安から来る株価や不動産の上昇は大企業や富裕層を利する一方、消費者は物価上昇に苦しみ、社会の格差を広げている」と述べた。
その上で中尾氏は、より積極な利上げを日銀に要望。「実質金利が大幅なマイナスの状態が続く異例な金融緩和が続いており、修正が必要」、「日銀は連邦準備制度理事会(FRB) のように毎回の金融政策決定会合で着実に利上げをしてもおかしくない」と話した。
さらに次期FRB議長に指名されたウォーシュ氏に言及し、「投資銀行出身であり、強い、安定したドルが米国の利益だというルービン元財務長官以来の伝統を持っているだろうから、日銀の金利引き上げが遅れるとさらに円安が進む」と予想。「(日銀が)政策金利引き上げでインフレに適切に対応することにより、国債の長期金利がはね上がることを抑制することもができるだろう」とした。
日銀は植田和男総裁が就任した23年4月以降、これまで政策金利を4回引き上げた。0.75%とした4回目の利上げは25年12月で、同年1月の3回目から1年弱の間隔が空いた。4回目の利上げ方針を固める際は、同年10月に誕生したばかりの高市早苗政権が利上げを容認する姿勢に傾いたことがロイターの取材で明らかになっている。
中尾氏は、政治的な環境が金融政策運営に影響することにも理解を示しつつ、「せっかく法律で独立性が与えられているのだから、適切な説明をしながら、長期的な通貨価値の安定と国民経済の発展に資する金融政策の正常化を進める覚悟が欲しい」とした。「為替の安定は財務省の所掌と主張するが、中央銀行がインフレにもつながる通貨の対外的価値の安定を図るのは当然」とも話した。
2011年の急激な円高局面でドル買い・円売り介入を指揮した中尾氏は、「実弾での介入は市場で大きな効果を持つと思うが、日銀が金利引き上げを着実に進める姿勢をあわせて示すことで効果は持続的になる」とも指摘。「米国債市場は非常に規模が大きく、米国債の保有を減らす意図でなければ、介入に伴う米国債の売却は問題としないだろう」との見解を示した。
<国債の借り換え費用>
中尾氏はまた、日本円に対する米国の見方を分析し、「米国財務省は対ドルで日本円や韓国ウォンが安すぎると考えている。日本の円や金利のボラティリティ(変動幅)が高まることに懸念を示している」と述べた。
実際、日本の金利急騰が波及することを米国が懸念していることが分かっている。事情を知る複数の関係者によると、高市首相が今月中旬に衆院解散を表明した直後の日本国内の金利急騰に、ベセント米財務長官が不快感を示し、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で片山さつき財務相に「日本の金利上昇が(米国の)トリプル安を招いた」と日本側に対応を求めた。
日本の長期金利が急ピッチで上昇した一因は、2月8日投開票の衆院選で与野党が消費減税を公約に掲げたこと。金融市場は財源と財政悪化懸念に注目した。
中尾氏は「国債発行を増やしてもそれは家計の資産になるから問題ないと主張する人がいるが、スムーズに借り換えできることが前提であり、将来的に財政懸念から国債が売られ長期金利が上昇すれば、国債の借り換え費用も膨らみ、かえって厳しい財政運営を迫られることになる」と語った。「高市政権は責任ある積極財政を提唱しているが、積極財政による成長拡大への期待に頼りすぎずに『責任』を重視し続けてほしい」と話した。
*5日にインタビューしました。
(竹本能文 山崎牧子 編集:久保信博)
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