- 2026/02/12 掲載
マクロスコープ:企業物価、国際商品に投機資金 「川下」波及なら基調インフレ下支え
[東京 12日 ロイター] - 先行きの物価を読むうえで、金(ゴールド)や銅など国際商品市場への投機資金の動向がかく乱要因として無視できない存在になっている。非鉄金属は日本の基幹産業で欠かせない原材料で、市況の高止まりが続けば、価格転嫁を通じて表面上は鈍化が見込まれている消費者物価指数(CPI)の基調を下支えする可能性がある。
2026年1月の国内企業物価指数(CGPI)は非鉄金属などの価格上昇を背景に前年比2.3%上昇した。非鉄金属の値上がりは実需や国際商品市況を反映した。
1月のCGPIは前月比もプラス0.2%と小幅ながら上昇を維持した。非鉄金属が前年比33.0%上昇し、12月(22.2%上昇)から加速したことなどが寄与した。銅は、インドネシアの鉱山事故やチリの鉱山でのストライキの影響で供給が減少する中、データセンター向け需要の拡大期待で値上がり。金も安全資産への資金回避ニーズで市況が上昇した。
企業物価指数は、企業間で取り引きされる商品の価格を調査する。CPIに先行して動くため、インフレ動向を占う指標として注目されている。日本では長らく、サプライチェーンの「川上」にあたる原材料の価格が上昇しても、企業が賃上げを抑制するなどしてコスト増を吸収し、最終価格に十分転嫁されない構造が続いてきた。
ただ、その構図も変わりつつある。人手不足や人材獲得競争などで賃上げが必須となり、政府の旗振りも相まって、製造、小売段階でも価格転嫁を実施しやすい環境が整ってきた。「コスト上昇=価格転嫁」という関係が以前より意識されている。
今回の非鉄金属の価格上昇は、投機資金が加わって増幅された側面が指摘される。ただ、設備投資やデジタル需要と結びついた価格上昇なら持続性と広がりを持ちやすい。
高市早苗政権が重点投資対象17分野の筆頭に掲げる「AI・半導体」は、データセンター需要の拡大と直結する。基盤インフラとなるデータセンターで使われる資材の価格上昇は、その施設を使用するクラウドサービスや消費者向けインターネットサービスの価格改定へとつながる可能性がある。
CPIの上昇率は今後、伸びが鈍化するとの見方が多い。前年のベース効果に加え、ガソリンの暫定税率廃止や電気代・ガス代への政策対応が押し下げ要因となるためだ。ただ、企業間の取り引きで「川下」への価格転嫁が波及しつつあるなら、基調的なインフレ圧力は下支えされ得る。
SMBC日興証券の宮前耕也・日本担当シニアエコノミストは、日銀のスタンスについて「賃金が上昇し、サービス価格へ波及していくかを重視している」としつつ、「為替や国際商品市況を反映した輸入物価の上昇が国内物価に与える影響は、過去よりも大きくなっているとみている」と指摘する。
1月の輸入物価指数は契約通貨ベースで前月比1.2%上昇、円ベースで1.7%上昇と、それぞれプラス幅が拡大した。円安要因だけでなく、市況そのものの強さも背景にある。
日銀の植田和男総裁は1月の金融政策決定会合後の会見で「(CPIの)ヘッドラインは2%を下回っていく可能性が高い。これに対して基調的なインフレ率はゆっくり上がり続けていく」と述べ、両者の方向性の違いに言及した。
表面上の数字と基調的な物価の間にあるギャップをどう読み解き、どう市場に説明するかも今後の政策運営のポイントになりそうだ。
(杉山健太郎 編集:橋本浩)
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