- 2020/12/07 掲載
需要回復速度は想定以上、自動車の戻りとらえ収益改善=日鉄副社長
「足元で自動車は世界中で戻りつつある。この動きをきちんととらえて収益をどんどん回復させていくのが足元の課題」と述べた。コロナ禍では、強みである自動車とエネルギー分野の需要減退が業績面でも大きく影響し、上半期の純損益は1911億円の赤字に沈んだ(前年同期は387億円の黒字)。
通期見通しは純損益を1700億円の赤字としており、下期に赤字幅の縮小を図る。宮本副社長は、家電関連も回復基調にあるとし、コロナ禍による落ち込みは最悪期を脱したとの認識を示した。感染が拡大している地域でも経済を回そうとしているとして、都市封鎖(ロックダウン)や生産停止があった上期のようなことは「ないだろう」とみている。今期の通期見通しは現時点では見直さない。
一時休止していた千葉県君津の高炉1基と、改修工事を終えた室蘭の高炉を11月に再稼働しており「今はフル(稼働)。さらに(需要回復)となれば、さらに高炉の凍結を解除していかないと需要に対応できなくなる」と指摘した。日鉄は4日、鹿島の高炉を1月下旬をメドに再稼働する、と発表した。
2021年度の鋼材需要と同社の粗鋼生産について宮本副社長は、19年度と20年度の間を見込んでおり、21年度は黒字化が可能との見通しを示した。コロナ禍以前の水準に戻らないのは、ホテルやレストランなどが投資を抑制し建築が振るわないとみているためという。土木関連は国土強靭化の動きもあって堅調と見込んでいる。
国内の需要減退を受けた中期的な構造改革として国内では設備のスリム化を進めているが、海外については「需要のあるところではきちんと能力を拡大していく」と強調した。まずは需要拡大を見込むインドで能力を増強する。アルセロール・ミタルと共同買収した旧エッサール・スチールの製鉄所で、買収前に年960万トンだった生産能力を1200―1500万トンに拡大する計画をすでに示している。その先は具体的な計画値はないものの、インド東海岸にあるペレット工場の拡張を含め、さらなる増強を検討していくという。
米国でもミタルと共同で電炉を新設することを検討しており、自動車用鋼板を一貫生産できる体制づくりを視野に入れる。北米などで「さらに能力を上げるためにどうするかを考えている」とした。
低炭素化の取り組みは「国の方針を念頭に検討している」という。水素やゼロエミッションの電力の活用など複数の取り組みを進め、「全部合わせて目標に向かっていく」方針を示した。「精力的に国全体で取り組んでいくのだろう」と述べ、インフラ整備や研究開発の費用負担で政府の取り組みに期待を示した。来年3月までに目標を取りまとめる方針。
米国では、トランプ政権下で通商拡大法232条に基づく鉄鋼輸入制限が発動された。民主党のバイデン前副大統領の次期大統領就任が確実となっており、宮本副社長は「世界的な保護主義の潮流が改善に向かうことを期待したい」と述べた。
*インタビューは2日に実施しました。
(大林優香 編集:平田紀之 田中志保)
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