- 2021/01/16 掲載
アングル:人民元堅調、不安視する当局に「レッドライン」あるか
人民元の対ドル相場は今年初日の取引で1%上昇し、2年半ぶりの高値を付けた。また、中国人民銀行(中央銀行)がより緩やかな上昇ペースを望んでいることを示唆したにもかかわらず、先週は週間ベースで2カ月ぶりの大幅高となった。
スタンダード・チャータードのシニア中国エコノミスト、リー・ウェイ氏は、人民元高が輸出鈍化、金融環境の引き締めといったビジネスインパクトをを引き起こす可能性に言及。「当局は人民元を基本的に安定した水準に維持することに引き続き注力するだろう」と語った。
外為当局も先週、外為市場での無秩序な変動を回避すると表明した。
中国国営新華社が8日報じたところによると、中国人民銀行の易綱総裁は「人民元を合理的かつ均衡のとれた水準で基本的に安定させられるよう期待を誘導することに注力する」と述べた。
一部の投資家は、安定に向けた当局者のコミットメントにもかかわらず、相場は振れが大きくなると予想。上海桐昇通惠資産管理のジョシュ・シェン最高投資責任者(CIO)は「2021年の人民元は、20年の上昇一辺倒とは異なり、非常に不安定な動きになると思う」と話す。
人民元は2020年の取引を1ドル=6.5283元で終了。1年前からの上昇率は6.7%だった。先週序盤には6.4292元の高値を付け、その後は小幅に値を下げている。
スタンダード・チャータードのリー氏は、短期的に当局者にとっての「レッドライン(越えてはならない一線)」は6.4元とみる。この水準は2018年6月以来越えていない。ただ、上半期にドル安が続くとこの水準を突破する可能性がある。
一部アナリストとトレーダーは、当局は具体的な水準よりも変動ペースを気に掛ける公算が大きいと指摘。みずほ銀行のチーフ外為ストラテジスト、ケン・チュン氏は「今の当局の人民元管理方法はA株と似ている。概して、政策当局者は人民元の緩やかな強気トレンドを促進したいと考えている」と語った。
規制当局にとって難しいのは、ドルが下落する中、人民元が引き続き上昇するとの期待が広がっていることだ。
昨年に新型コロナウイルス流行に伴うロックダウン(都市封鎖)から早期に抜け出したことで人民銀が政策を引き締める余地が生まれ、米中の利回り差が拡大し、外国人投資家による中国債買い入れが進んでいる。
上海にある摩根資産管理(JPモルガンアセットマネジメント)のグローバル市場ストラテジスト、朱超平氏は、このことが人民元を後押しするポジティブなフィードバックループになっていると指摘。「中国はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大という点では最も安全な地域にとどまる可能性があるほか、中国の経済成長は依然として世界をリードしている。そのため、われわれは上半期も資本流入が続くと信じている」と話した。
こうした資本流入が続く中、投資家は中国が引き続き資本流出に対する制限を撤廃し、個人・機関による対外投資を促進すると見込んでいる。
(Winni Zhou記者、 Andrew Galbraith記者)
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