• 2021/03/04 掲載

アングル:日銀点検ではリートも注目か、一部がリミット間近に

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杉山健太郎、木原麗花、和田崇彦

[東京 4日 ロイター] - 日銀が3月の金融政策の点検で不動産投資信託(J-REIT)の買い入れを見直すか、市場で注目されている。これまでの購入により、現行ルール上の買い入れ限度額の「リミット」に迫る銘柄が散見されるようになってきたためだ。このままではいずれ現行ペースでの買い入れが難しくなり、「緩和の後退」にもつながりかねない。アナリストや日銀の一部からは、政策ツールの持続性・有効性確保に向けてルール修正などの可否が議論になる可能性があるとの声が出ている。

<コロナ対応で一時買い入れ増>

日銀は新型コロナウイルスの感染拡大で市場が不安定になったことに対応し、昨年3月に資産買い入れの積極化を打ち出した。J-REITの残高増加ペースは年間約1800億円を上限とし、原則の約900億円から倍増させている。

この結果、2020年12月末のJ-REITの残高は前年同月比20.6%増の6696億円と大幅に増加。増加額は1145億円と、18年末から19年末にかけての増加額506億円に対して2倍以上となった。

足元ではコロナ危機対応で拡大した1回当たりの買い入れ額は縮小しているが、個別銘柄では保有比率がルール上の上限に近づいてきたものもある。

J-REIT購入には格付けがAA格相当以上、年間売買成立日数200日以上かつ年間売買累計額200億円以上、買い入れ限度額は各REITの発行投資口総数の10%以内──といった基準が設けられている。

日銀が提出した大量保有報告書を基にみずほ証券がまとめたところ、21年1月初旬の時点で、日銀が保有していると確認できる23銘柄のうち7銘柄で保有比率が9%台に達していることが分かった。

みずほ証券によると、1回当たりの買い入れ額を12億円、月間6回購入するとして試算した場合、保有比率が9.45%に達しているジャパンエクセレント投資法人は早ければ今年6月か7月、同9.48%の福岡リート投資法人は8月か9月にも上限に到達する可能性があるという。

みずほ証券の石崎晃士シニアクレジットアナリストは「一部の銘柄で上限が近いことを鑑みると、この点検のタイミングで買い入れルールの見直しが行われることは十分にあり得る」と指摘。その上で「保有比率上限の引き上げや買い入れ対象としてJ-REIT特化型ETF(上場投資信託)の追加、外部格付けA格以上への引き下げなどの対応が考えられる」という。

<買い入れ拡大には慎重論も>

日銀内では、J-REITの買い入れ上限の引き上げや要件の緩和に慎重な意見も少なくない。ETFの購入と同様、異例の政策対応である上、市場規模が小さく、買い入れによる個別の資金配分への関与もより強まることになるためだ。保有比率が上昇することによって経営への関与度合いが増すことを回避したい考えもある。

より低い格付けの銘柄を対象にするといった措置についても、日銀内には「市場が大きく動揺した場合は排除されないが、点検の議論からは生じづらい」との見方がある。

「そもそもREITはETF以上に買っていることの説明が付きにくいメニュー。一時的な政策として始めたはずが、止められずにここまで来てしまった」との声も日銀内では聞かれる。いずれ出口戦略を取らざるを得ない中、日銀としてはいたずらに買い入れを増やしたくないというのも実情だ。

一方、個別銘柄が購入限度額の上限に達したことで、この先の買い入れに支障が出る事態となれば「緩和は継続する」(黒田総裁)方針と齟齬(そご)が生じる可能性もある。日銀内からも、今回の点検でJ-REITの買い入れ方法の修正が行われる「可能性がある」との声も聞かれる。

<過去「5%以内」から引き上げ>

日銀はJ-REIT買い入れを10年12月に開始し、当初は銘柄別の買い入れ限度は発行済投資口数の5%以内としていた。しかしその後、残高がこの水準に近づく銘柄が増え、15年12月に現在の10%以内に引き上げた経緯がある。

この時の「金融政策決定会合における主な意見」では、委員の1人から「J-REIT買い入れの5%の基準を維持すると、事実上、J-REITのテーパリングが始まることになり、量的・質的金融緩和の政策効果を損なうことになる」との声が上がり、「緩和姿勢の後退」と受け止められないための配慮がにじんだ。

黒田総裁のみならず、若田部昌澄副総裁も先だって2月3日の講演で「今回の点検は金融緩和の後退方向での議論ではない」と強調しており、市場参加者の間では、日銀はJ-REITの買い入れを継続するという共通認識があるようだ。その中で、銘柄によっては買い入れ上限まで達しつつあるという「現実」に、どのような方法で対応するのか──。日銀は難しい判断が迫られている。

(杉山健太郎、木原麗花、和田崇彦 編集:田中志保)

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