- 2021/03/17 掲載
アングル:「物言う株主」と企業統治で攻防、東芝が臨時総会
[東京 17日 ロイター] - 東芝が18日に開く臨時株主総会は、昨夏の定時株主総会の運営を巡り、筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネジメントが提案した第三者による調査委員会の設置が争点の1つになる。
有力な機関投資家は、相次ぎ提案に支持を表明。エフィッシモの勝利を予想する向きも出ており、日本企業に統治体制(コーポレートガバナンス)の改革を求めるアクティビスト(物言う株主)の活動が勢いづく可能性がある。
シンガポールに拠点を置くエフィッシモは昨年7月の定時株主総会で、東芝のガバナンスを強化するためとして同ファンドの共同創業者などを社外取締役に提案したが否決された。
同総会では一部の議決権が結果に反映されなかったり、経済産業省の関係者が複数の海外株主に事前に接触していたことが明らかになっており、エフィッシモは総会が適正に運営されたかについて独立した調査を求めている。すでに自社で調査を実施済みの東芝は、エフィッシモの提案に反対している。
東芝は株主の約25%がアクティビスト投資家とみられている。米国の原子力発電所建設事業で巨額の評価損を出して経営難に陥った同社は、2017年に第三者割当増資で6000億円を調達。もの言う株主の比率が高まった。
18日の臨時株主総会を前に、決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ(ISS)とグラス・ルイスは、エフィッシモの提案に賛成票を投じるよう推奨。ある市場関係者は、「ほとんどのファンドマネジャーが、これらの推奨に従わないことを正当化するのは難しいだろう」と話す。
有力機関投資家である米公的年金基金のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)や、ノルウェー政府年金基金を運営するノルゲスバンク(NBIM)は、オンラインによる期日前投票で賛成票を投じたことを明らかにしている。金融情報サービスのリフィニティブのデータによると、CalPERSは東芝株の0.45%、NBIMは1.32%を保有している。
フロリダ州公務員年金基金や、カリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)も賛意を示している。
東芝関係者は「これまでに得た情報によると、我々は劣勢」と話す。
もしエフィッシモ案が可決されれば、東芝の経営陣、とりわけ車谷暢昭最高経営責任者(CEO)には痛手になりかねない。エフィッシモが独立した調査を提案したのは、東芝自身による調査への不信感が発端だ。「(新たな)調査の結果がどのようなものであれ、経営陣に否定的な印象を与える可能性がある」と、この東芝関係者は言う。
東芝広報はロイターの問い合わせに対し、コメントを控えた。
臨時株主総会でエフィッシモの株主提案が可決されるには、投票した議決権の過半数の賛成が必要。事情に詳しい関係者によると、米資産運用大手ブラックロックは、エフィッシモの提案に反対票を投じた。ブラックロックはロイターの取材にコメントを控えた。
ブラックロックは東芝株5.21%を保有していることが、今月4日に判明している。みずほフィナンシャルグループのみずほ銀行、みずほ証券、アセットマネジメントOneの3社も合計5.07%を保有していることが5日に分かった。
18日の臨時総会で議決権を行使するには、基準日となる2月1日時点での持ち株比率が重要となる。ブラックロックとみずほが当時、どの程度の議決権を持っていたかは明らかになっていない。
今回の臨時総会では、米ヘッジファンドのファラロン・キャピタルも、東芝が小規模な企業買収・合併(M&A)を通じて成長を目指すとした戦略を変更したと指摘し、資本政策を株主の承認事項にするよう求めている。東芝側は、成長戦略を変えた事実はないとしている。
(山崎牧子、平田紀之 編集:久保信博)
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