- 2022/08/26 掲載
アングル:世界で深刻化する水不足、「勝ち組」企業選び活発化
ケニアから米カリフォルニア州、欧州の半分近くの地域まで、新鮮な水が足りないという問題は新たに多くの住民を窮地に陥れ、政策担当者は重大な関心を寄せている。
そこである投資家グループは今月16日、企業により有効な水資源の利用を促すための圧力を強化し、この取り組みが鈍い企業の取締役には不信任投票をする可能性があると表明した。同グループの合計運用資産は10兆ドル(約1370兆円)近くに上る。
何のために投資家がこのような行動に出るのかは、誰の目にもはっきりしている。企業活動が環境に及ぼす影響についての情報開示システムを運営する非営利団体CDPとプラネット・トラッカーが5月に公表した分析結果に基づくと、上場企業は今後、水に絡むリスクで少なくとも2250億ドルもの損失を被りかねないのだ。
CDPの企業・サプライチェーン担当グローバル・ディレクター、デクスター・ガルビン氏は「これらのリスクはもはや遠い世界の出来事ではなく、足元で起きている現実だ」と警鐘を鳴らした。
例えば先週、トヨタ自動車は干ばつが原因の電力不足を理由に、中国・四川省の工場で操業を停止した。また国連によると、現在23億人が切迫した水不足にある諸国に暮らしている。
一方、資産運用業界では水にかかわる事業を手掛ける企業に投資する「水関連株ファンド」も相次いで立ち上げられた。背景には世界の実情を踏まえた投資家の危機意識と、解決策を求める動きがある。
ロイターとモーニングスター・ダイレクトが共有するデータを見ると、過去5年間でこの種のファンドが23本設立され、7月末時点の運用資産総額は80億ドルに達している。
バータス・ダフ・アンド・フェルプス・ウォーター・ファンド(資産8億1200万ドル)のポートフォリオマネジャー、デービッド・グラハムス・ジュニア氏は、水資源危機が悪化するとともに、同ファンドには「波及効果」が出てきていると述べた。「ライン川を船舶が航行できないため、ドイツ国民が物資を十分に得られなくなると報道されれば、投資家は間違いなく水問題と当ファンドに思いを巡らせる」という。
<広がる投資範囲>
もっとも水利権は地域ごとに細かく区分され、規制も厳しい以上、水関連株ファンドが直接保有しているわけではない。こうしたファンドはその代わりに、水にかかわる事業を展開する上場企業に投資する、とモーニングスターのシニア・マネジャー・リサーチ・アナリスト、ボビー・ブルー氏は説明した。
各水関連株ファンドが共通して保有するのは、米水道サービスのアメリカン・ウォーター・ワークスや、水質の計測・分析などを行う米ザイレム、水の安全な輸送に従事するスイスのジョージフィッシャーなどだ。
とはいえ水の事業に特化する上場企業の数はとても少ない。セマティク・ウォーター・ファンド(資産2億8200万ドル)の共同マネジャー、サイモン・ゴッテリア氏は、世界中で投資可能な水の公益企業は25─30社程度で、水関連技術系の企業も「一握り」に過ぎないと明かした。
モーニングスターのブルー氏は「誰もが水の分野で何か投資をしたがっているが、上場企業を通じてそれを実行するのは難しい」と指摘する。
このため運用担当者は、他の事業とともに水関連の事業を展開する企業というより大きな母集団に目を向けている。これらの多くは、淡水化や灌漑、汚染防止といった分野に軸足を置く企業だ。
ピクテ・ウォーター・ストラテジー(資産92億ドル)のマネジャー、セドリック・ルキャム氏に話を聞くと、同ファンドが水にかかわるそれなりの事業を持つと特定した企業は360社に上る。7月末時点で保有株が最も多いのは水質検査部門を傘下に抱えるダナハーだが、同社は生命科学と医療診断で最大の収入を得ている。
水関連株ファンドの運用担当者は、水不足問題の解決に関与する企業が増えてきている以上、水関連事業に特化する企業以外に投資の網を広げることは必要不可欠なばかりか、潜在的な価値を持つ資産を手に入れる道になると強調する。
インパックス・ウォーター・ストラテジー(資産73億ドル)の共同マネジャー、ジャスティン・ウィンター氏は「水関連事業でソリューションを提供する新たな企業は爆発的に拡大している」と述べた。
(Cole Horton記者、Ross Kerber記者、Simon Jessop記者)
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