- 2022/11/10 掲載
経済の不確実性に警戒、賃上げ次第で物価達成近づく可能性=日銀総裁
[東京 10日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は10日、労働市場が逼迫しており物価目標達成の環境が整いつつあるとする一方で、日本経済を巡る不確実性に警戒感を示した。金融緩和の継続で経済が回復し賃金上昇を伴った物価目標達成を目指すと強調し、来年度以降の賃上げ次第で達成が近づく可能性に言及した。
金利の引き上げで経済に「マイナスの影響を与えるのは好ましくない」としつつ、出口戦略の局面になれば金利の引き上げ速度とバランスシートの修正について検討していくことになると述べた。
黒田総裁は参院財政金融委員会で半期報告を行った。
<2%目標達成なら出口議論>
黒田総裁は現行の金融緩和からの出口について、「時期尚早」としつつも「賃上げを伴い2%の物価目標を安定的に達成できるのであれば、当然、出口戦略を議論する」と述べた。
来年度以降の賃上げ次第では2%の物価目標達成時期が早まる可能性があるとの見方を示し、出口戦略は「政策金利の引き上げペースと、拡大したバランスシートの修正」になるとの見方を示した。一方で、欧米でも英国を除いて保有国債売却などのバランスシートの縮小は着手していないと指摘した。
日銀の資金供給量を示すマネタリーベースが8月以降前年割れとなっている理由については「新型コロナオペのニーズ減少による残高低下」と説明し、「緩和からの出口に向かって動いているということではない」とした。
出口の局面で政府と日銀の関係が再考される可能性を問われると、黒田総裁は「日銀の自主性、独立性は維持してもらいたい」と強調した。
<在任10年、再任希望全くない>
黒田日銀の異次元緩和の後始末は困難であるため続投が適当でないかとの質問には、総裁任期は政府が決めるものと述べた上で、「個人的な感想だが、来年の4月でちょうど2期10年になるので、再任されたいとか希望するとか、そういう個人的な希望は全くない」と答えた。
半期報告では、日本経済は「資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している」とした。生鮮食品を除く消費者物価の前年比はプラス3%程度になっているものの、エネルギーや食料品、耐久財などの押し上げ寄与の減衰に伴い、来年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくとの見方を示した。
その上で、金融緩和を継続することで「経済をしっかりと支え、賃金の上昇を伴う形で2%の物価目標を持続的・安定的に実現することを目指していく」と述べた。
<ドル独歩高の継続予想、必ずしも正しくない>
黒田総裁は為替動向について「最近の円安の進行は、急速かつ一方的で望ましくない」と述べ、政府と緊密に連携して金融・為替市場の動向や日本経済・物価への影響を十分注視していく方針を示した。
為替は政府の所管であり「日銀が為替に対して政策を発動することはなく、経済全体について判断する」と指摘。円安はインバウンドにはプラスだが、「急速な進行は企業の事業策定を困難にする」との見方を示した。
直近の為替相場は「政府の(円買い介入)対応もあり、円安進行はいったん止まっている」と説明。先行きについても、米国は金融引き締めで経済がマイナス成長となる可能性があり、金融市場の調整もあり得るため、「ドルの独歩高がずっと続くという予想は必ずしも正しくない」と発言した。
一方、各国の利上げで金融市場が大きな影響を受け、日本に影響するリスクは今のところ小さいとの見方を示した。
足元の物価上昇に関しては「エネルギー・食品・耐久財の価格かなり上がり、消費マインドの悪化通じて消費に影響出てくる可能性がある」とし、「相対的に所得の低い人ほど実質所得が低下していることは十分承知している」と述べた。
与野党の議員から、9年と長期にわたる日銀の金融緩和の成否について質問が相次いだ。黒田総裁は、政策の効果と副作用を勘案し効果が大きいと指摘。マイナス金利政策についても「金融仲介への影響も配慮して実施している」と説明した。
(和田崇彦、内田慎一、竹本能文 編集:田中志保、青山敦子)
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