- 2025/12/02 掲載
ブラザー工業・元社長に聞いた、採用難も一変する「最強の人材マネジメント術」4カ条(2/3)
- ポイント(1):従業員にとって魅力的な会社にする
- ポイント(2):業務の「見える化」「効率化」を推進する
- ポイント(3):熟練者のスキル・ノウハウを数値化する
- ポイント(4):業務の自動化を推進する
それぞれについて深掘りしていこう。
■ポイント(1)
先でも触れたが、佐々木氏は「従業員が成長でき、貢献を実感できる環境づくりが重要」と強調する。具体的には、従業員に業務の「見える化」「効率化」「自動化」に取り組んでもらうことで、自動化する側の人材として成長してもらう仕組みを構築することが核心となるという。
また、利益が出て世間一般以上の給与を実現することも重要な要素として挙げている。
佐々木氏は利益について、「価値をお客さまに提供するためのコストに対してお客さまが感じる価値が上回っているからこそ対価をいただけます。利益が出るということは、自分たちが努力してつくり上げている価値が十分そのかかるコストに付加価値を付加している証明です」と説明する。
■ポイント(2)
業務の見える化・効率化には、フローチャート化が有効だと佐々木氏は提言する。特にISO標準のBPMN(Business Process Model and Notation ISO/IEC 19510:2013)を活用したフローチャートを推奨している。
「フローチャートは横線で区切られた『レーン』により、複数部門間のモノとデータのやり取りを記述できます。関係部門が集まってレビューすることで、省略できるプロセスや業務の流れ、担当部門の変更点などが明確にできます。良さとしては、フローチャートがぐちゃぐちゃしているところが改善ポイントであるということで、これはひと目で分かります」(佐々木氏)
製造現場では動画分析の画像処理AI技術を活用し、作業者の動きを撮影して分析している。これにより作業のムダが明確となり改善につなげることができる。
重要なのは、業務改善が得意な従業員を業務改善チームに配置し、他部門の改善にも参加してもらうことだ。佐々木氏は「すべてをコンサルに頼んでも、コンサルが去った後、従業員には何も残りません。できるだけ従業員に自らやってもらうことが大切なのです」と語る。
■ポイント(3)
熟練者のスキル・ノウハウの伝承は、従来「時間がかかる」ことが課題だった。しかし佐々木氏は、「その人が急病や事故に遭遇したらどうするのかを考えるべきです」と指摘する。
対策として、できる限り聞き取って記録を残すこと、ビデオ撮影、センサーでの測定などを挙げる。たとえば「炎の色で温度を判断する」技能なら温度センサーで数値化できないか、「音の変化で判断する」技能なら録音して検知できないかを試行錯誤する。
実際、豊田合成では熟練職人の加工をデータ化し、5軸同時加工機で再現できるようにしたことで厚生労働省の「現代の名工」を受賞した。
「熟練者の技をいかに自動化へ持ち込めるか、それがこれから必要な技になります」(佐々木氏)
■ポイント(4)
生成AIの登場によって、業務自動化の状況は一変した。以前はVBAやPythonなどのプログラミング言語習得が必須だったが、現在は生成AIにプログラムを作成してもらったり教えてもらったりできる時代となった。
こうした中、ブラザー工業では2018年ごろから「AIエブリウェア」プロジェクトを開始しており、現在は全社員が使える生成AI環境を構築している。翻訳や論文要約、議事録作成などの業務で成果を上げているという。
「小さな成功事例をつくることがすごく大事。役に立つということを小さな事例でも証明してあげれば、みんな必ず使ってくれます」(佐々木氏)
各部門からの活用事例を全社で共有することで利用は拡大。技術の進歩に合わせてバージョンアップし、従業員からの改善要望にも迅速に対応することで定着を図っている。
協働ロボットの導入でも同様のアプローチを取り、小さく始めて効果が出たら拡大させていく。特に若い従業員にチャレンジしてもらうことで、社内から若手のヒーローが生まれ、周囲をけん引する効果が期待できる。 【次ページ】AI時代へ…高齢社員含め「意識改革」を実行
人材管理・育成・HRMのおすすめコンテンツ
人材管理・育成・HRMの関連コンテンツ
PR
PR
PR