• 2025/12/02 掲載

ブラザー工業・元社長に聞いた、採用難も一変する「最強の人材マネジメント術」4カ条(3/3)

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AI時代へ…ベテラン社員含め「意識改革」を実行

 2016年に登場した「第4次産業革命」という概念は、人間の仕事の半分が10年後にAIとロボットに置き換わると予測した。佐々木氏は現在の状況を振り返り、「だいたいこのペースで進んでいる」ことを実感。そして、生成AIやAIエージェントの登場により、この変化はさらに加速している。

 こうした状況で従業員は2つのグループに分かれると佐々木氏は指摘する。

「自分たちの仕事が自動化される側になると、仕事はどんどんなくなります。一方で、自分たちの仕事を自動化する側になれば、仕事はどんどん増えていきます」

 実際、過去の自動車産業での例を見ると、ロボットを積極的に導入した日本企業は成長し、導入を躊躇した欧米企業はリストラを余儀なくされたケースもある。最近のドイツの調査でも、ロボットを活用する企業では雇用が増加し、活用しない企業では雇用が減少しているという。

 こうした環境変化に従業員自らが対応していかなければならず、そのためには意識改革が必要だ。佐々木氏は従業員の意識改革について、こう語る。

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「IVI公開シンポジウム2025-Autumn-」(主催:IVI)で講演する佐々木氏

「AIを使わない従業員の中で、その理由を『ハルシネーション(幻覚)がある』と言う人がいますが、そうした人に対し、『自動車に乗るのをやめてください。戦車が来ていますが竹槍で戦ってください』と比喩で説明しています。冷静に考えればやらざるを得ない世界だと理解してくれます。覚悟を決めるのがものすごく大事。早く覚悟を決めさせてあげないと、人生の時間をムダにしてしまいます」(佐々木氏)

 また、「もう歳だから新しいことはやりたくない」というベテラン社員への対応も課題となる。佐々木氏は「人生100年時代で年金も期待できない。何歳になっても成長が必要」と説き、従業員の尻を押し続けることの重要性を語る。短期的には迷惑がられても、5年後、10年後に感謝される取り組みこそが経営者の役割だという。

「成長後に転職」もポジティブに考える深い理由

 一方、従業員が成長した後、さらなるステップアップを図ろうと人材が流出する可能性も考えられる。特に昨今は人材流動性が高まっている時代だ。だが佐々木氏はそうしたことにも臆さない姿勢を見せる。その根底には、ある経験が背景にあるという。

「英国企業でのM&Aを経験した際に、日本とはまったく異なる人材への考え方に出会いました。それは『転職者が出ると、より優秀な人材を探すチャンスとして活用する』という発想です。つまり、転職を『会社を強化するチャンス』として積極的に活用するということです」

 「従業員を育てる会社」という評判が広がれば、優秀な人材は自然と集まる。採用の倍率が上がれば、組織全体のレベルも向上していく。一方、そうした評判を築けない会社は人が辞めるばかりで補充もままならなくなる。

 日本では、多くの経営者が転職をネガティブに捉えがちだ。「新人は3年で育て、その後活躍してもらう」という発想があるからだろう。しかし欧米では、業務の見える化が徹底され、バケーションで2週間不在でも業務が回る体制が整えている。そのため、新しい人材も短期間で成果を出せる環境があるのだ。

 佐々木氏は「日本も必ずそのスタイルに移行するでしょう」と明言する。だからこそ経営者は、転職をネガティブに捉える必要はない。佐々木氏が話した通り、会社を成長させ続けるために、「ここにいれば成長できる」と社員に思ってもらえる会社づくりに注力すべきなのだ。

本記事は2025年10月9日開催「IVI公開シンポジウム2025-Autumn- ~設計と生産技術の連携による製造業の価値創造~」(主催:IVI)の講演を基に再構成したものです。記事の内容はイベント当時のものです。

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