- 2023/05/02 掲載
米ファースト銀、公的管理下に JPモルガンが全預金引き継ぎ
米銀の破綻はシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行に続くもので、過去約2カ月で3行目となる。
当局はファースト銀の売却先を決める入札を実施。関係筋によると、入札には、JPモルガンのほかにPNCフィナンシャル・サービシズ・グループやシチズンズ・フィナンシャル・グループなども参加した。
JPモルガン・チェースは、ファースト銀の大半の資産を取得し、預金保護対象外のものを含め全預金を引き継ぐ。
ジェイミー・ダイモン会長兼最高経営責任者(CEO)は、行動を求める政府の呼びかけに応じたとし、「当行の財務力や能力、ビジネスモデルによって預金保険基金のコストを最小限に抑えることができた」と説明した。
米財務省報道官は1日、全ての預金者が保護され預金保険基金へのコストを最小限に抑える形で問題を解決できたことに勇気づけられると表明。米国の銀行システムは依然として健全で底堅いと述べた。
ウェルズ・ファーゴのアナリストは、今回の措置の発表前にまとめたリポートで「心配の壁が弱まる可能性がある。ファースト・リパブリックの処理により、シリコンバレー銀行に端を発した7週間の危機に終止符が打たれるだろう」と述べた。
JPモルガンによるファースト銀取得は市場の懸念を和らげると同時に、最大手行がさらに大きくなることで中小銀行のビジネス環境悪化を招くおそれがあるという指摘も聞かれた。
非営利団体ベター・マーケッツのデニス・ケルハー代表は「不健全な統合、不公平な競争、大きすぎてつぶせない銀行の危険な増加は総じて地銀や中小企業向け融資、経済成長に害を及ぼす」と指摘。「規制当局は、経営困難となった危険な銀行の清算ではるかに優れた計画を策定する必要がある」と述べた。
JPモルガンはすでに全米の銀行預金総額の10%超を保有。ウェルズ・ファーゴのアナリストによると、ファースト銀取得によって、ネットベースでさらに3%増加する見通し。
JPモルガンの株価は約2.5%上昇し。他の大手行も連れ高となった。一方、地銀株は売りにさらされ、KBW地域銀行指数は2%超下落した。
<大手銀の「支援」預金払い戻しへ>
合意の一環で、JPモルガンは米連邦預金保険公社(FDIC)に106億ドル支払う。また、取得した一戸建住宅ローンや商業ローンについてFDICと損失分担契約を締結した。
ファースト銀のローン約1730億ドル、証券300億ドル、預金920億ドルを引き継ぐ。ファースト銀の社債や優先株は引き継がないとしている。
3月に大手銀行が事実上の支援として実施したファースト銀への預金300億ドルのうち250億ドルを払い戻す予定。
FDICは声明で、ファースト銀の処理で預金保険基金が負う費用は130億ドル程度になるとの見通しを示した。最終的なコストはFDICの管理が終了した時点で決まる。
JPモルガンは、今回の取引に伴い約26億ドルの一時利益(税引き後)を計上するとの見通しを表明。一時利益には、今後18カ月で発生するとみられる推定20億ドルのリストラ費(税引き後)は反映されていない。
ファースト銀の事業を引き継いだ後も資本基盤は盤石と説明。普通株式等Tier1比率は2024年第1・四半期の目標(13.5%)と合致し健全な流動性バッファーを有するとした。
取得した事業は、コンシューマー・コミュニティー銀行業務の共同CEOのマリアンヌ・レーク、ジェニファー・ピープスザック両氏が統括する。
ファースト銀の8つの州にある84の拠点は1日からJPモルガン・チェースの支店として業務を再開する。
<金利上昇>
米シリコンバレー銀(SVB)、シグネチャー銀行の破綻、スイス金融大手UBSによる経営不安に陥ったクレディ・スイス買収、さらに今回のファースト銀の破綻と、銀行部門で続くストレスについて、米連邦準備理事会(FRB)にょる積極的な利上げに起因するという指摘もある。
グレート・ヒル・キャピタルの会長兼マネージングメンバー、米国のトーマス・J・ヘイズ氏は「SVB破綻の際には、容易に同行の経営陣を非難できたが、これまでのトレンドを見ると、FRBの過度に大幅かつ速いペースでの行動によって状況が損なわれていることは明白だ」と指摘した。
CMEグループのフェドウオッチによると、市場が織り込む今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%ポイント利上げの確率は90%となっている。
*動画を更新して再送します。
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