- 2023/08/15 掲載
焦点:外需頼みに脆さ、米中経済に漂う暗雲 失速にらみ対応の声も
<2年半ぶり高成長>
「供給制約の緩和を通じて自動車生産が回復し、輸出が増えた。かなりの部分を外需が引っ張っている」。4―6月期GDPを巡り、政府関係者の1人はこう語る。
内閣府によると、実質成長率は前期比1.5%増となり、年率換算では6.0%のプラス成長だった。成長率は20年10―12月期以来の高い伸びとなった。
半導体不足に伴う生産調整が復調したことに加え、インバウンド需要(サービスの輸出)が急回復した効果も大きい。日本政府観光局によると、6月の訪日外客数はコロナ禍の20年2月以降で初めて200万人を突破し、同月までの暦年累計では1000万人を超えている。
先行きについて専門家からは「自動車の挽回生産や経済活動の正常化が個人消費や輸出などを下支えし、緩やかながらも回復基調が続く」(大和総研の田村統久エコノミスト)との声が聞かれる。7―9月期もプラス成長を実現すれば4四半期連続となる。
<微妙なプラス維持>
とはいえ外需寄与度1.8%のうち、1.1%は輸入の減少によるもので、輸出の増加分は0.7%にとどまる。その輸出の先行きにも不透明感が漂う。利上げに伴う米景気の減速懸念に加え、新たに中国でのデフレ懸念が台頭。世界経済をけん引してきた中国経済の変調は、少なからぬ影響をもたらしかねない。
バイデン米大統領は10日、中国経済が失速しているとして「時限爆弾だ」と表現した。これに先立つ9日に、バイデン氏が先端技術に関する対中投資を規制する大統領令に署名したことに中国側は反発しており、米中の新たな摩擦が景気を冷やす懸念も出かねない。
「4―6月期は外需が成長率を押し上げたが、輸出の回復は一時的にとどまりそうだ」と、ニッセイ基礎研究所の斉藤太郎・経済調査部長は言う。日本の輸出総額のうち、米中向けは合わせて約4割を占める。
斉藤氏は「海外経済の減速がより明確になる今後もプラス成長を維持できるかは、個人消費を柱とする内需の動向にかかってくる」とみている。
<物価高が足かせ、改定値見極めも>
GDPの過半を占める個人消費は4―6月期に前期比マイナス0.5%と3四半期ぶりのマイナスとなった。四半世紀ぶりの賃上げ機運とは裏腹に、家計の可処分所得が消費支出に回っていないことから、政権与党内には「物価高で節約志向を強めている可能性がある」(中堅幹部)との声がある。
総務省によると、2人以上の世帯の消費支出は6月にかけて4カ月続けて前年同月を下回っている。食料や家電など生活関連の品目が振るわない。
「食料品の値上げが続けば生活への影響は避けられない。9月末までとなっている電気料金の負担軽減策などの延長も含め、必要に応じた対策を講じていく」(別の幹部)との声も、与党内にはある。
後藤茂之経済財政相はこの日のGDP発表を受けて「引き続き経済・物価動向を注視し、必要があれば機動的に対応を講じるなど、国民の目線に立った対応を行っていく」との談話を発表した。
内閣府は、法人企業統計などの基礎資料を反映したGDP改定値を9月8日に発表する予定で、内需を両輪で支える企業の投資姿勢がどう出るかも景気対策の是非に影響しそうだ。
(山口貴也、杉山健太郎 編集:石田仁志)
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR