- 2023/10/24 掲載
アングル:26日ECB理事会、追加利上げやPEPP再投資など5つの論点
[ロンドン 23日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は前回9月の理事会まで10会合連続で利上げを決めており、今週26日の理事会で政策金利を据え置く相応な理由がそろっている。
ただ中東での紛争勃発に伴うエネルギー価格上昇は、物価高と闘う中銀にとって新たな逆風だ。トレーダーは借り入れコストの高止まりがいつまで続くのか感触を得ようと目を凝らしている。
INGのマクロヘッド、カーステン・ブルゼスキ氏は「最大の課題はバランスを保ち、過剰にタカ派的な言い回しを避けつつ、利上げへの扉を開いておくことだろう」と話す。
次回理事会の重要な論点5つをまとめた。
(1)追加利上げの行方
ECBは利上げの一時停止を示唆しており、市場はこれ以上の利上げはないと見込んでいる。一方、ECBが追加利上げを排除することはないだろう。
ラガルド総裁は長期債利回りを押し上げている「(金利を)高い水準で、より長く」という主張を繰り返すことになりそうだ。
景気の軟化で追加引き締めの必要性は限られるが、ECBは利下げ観測には抵抗するだろう。
ドイツ銀行の金利調査グローバルヘッド、フランシス・ヤレド氏は「ECBが方針を変え、追加策が必要だと考えるようになるのは、恐らく来年の早い時期だろう。しばらくはデータ次第だと確約している」と述べた。
ECBのチーフエコノミストであるフィリップ・レーン氏は、ECBがインフレの下振れを確信できるようになるには来年の春まで掛かるとの見通しを示している。
(2)PEPP再投資終了時期の扱い
ECBがすぐに積極的な資産売却に乗り出すことはないだろう。議論の中心となるのは、2024年12月に設定されている「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」の再投資終了時期を前倒しするかどうかだ。しかしイタリア国債利回りの上昇が前倒しの議論に水を差す可能性がある。
PEPPでは、最も必要としている国により重点的に再投資ができる。ラガルド氏はこうした運用について、金融政策の有効性を低下させる、行き過ぎた利回りスプレッドの拡大(分断=フラグメンテーション)に対する最初の防衛ラインだと述べている。
UBSのチーフエコノミスト、ラインハルト・クルーゼは「最近(イタリアの)利回りが上昇しただけに、PEPPの再投資に関する(新たな)決定はない。市場はなおかなり神経質で、ECBは火に油を注ぎたくないだろう」と述べた。ECBが再投資について判断するのは12月か2024年初頭になると見ている。
(3)エネルギー価格再上昇の影響
欧州のガス価格は10月に入ってから35%上昇、原油は93ドルを超えており、エネルギー価格上昇がインフレを再び押し上げる恐れがある。
リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントの金利・インフレ責任者、クリス・ジェフリー氏は「エネルギーを輸入に頼る欧州は、中東情勢の緊迫による物価高騰に対して米国よりも脆弱だ」と指摘。今のところラガルド氏はエネルギー価格上昇が続くかどうかがはっきりするまで、エネルギー高を巡る議論に「引きずり込まれない」ことを望んでいると分析した。
一方、UBSのクルーゼ氏はエネルギー価格について、強力なディスインフレ方向のベース効果が働いているため、物価見通しを変える決定的な要因ではないとの立場だ。
ECBは総合ベースの物価上昇率が2023年の平均5.6%から24年には3.2%に鈍化すると見込んでいる。
(4)イタリアの財政赤字拡大への対応
今のところECBがイタリアの財政悪化に対して大きな動きを示すことなさそうだ。イタリアは赤字拡大見通しが高まって借り入れコストが上昇、ドイツ国債との利回り差が200ベーシスポイント(bp)に広がり、ECBが市場の不安を和らげるため性急な対応に動くとの観測も出てきている。
ECBは昨年、債務残高の多い国を支援し、「分断」を防ぐための新たな債券買い入れスキームである「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」を導入した。
ただロイターが最近取材した6人中5人がECBは介入を急がないと回答した。
INGのブルゼスキ氏は「ECBはできるだけ長い間、様子見でいようとするだろう」と述べた。
(5)金融環境引き締まり度合の点検
25日に発表される9月の融資統計が手掛かりになりそうだ。
銀行が融資を抑え、預金者が貯蓄の引き出しを停止したため、ユーロ圏の資金流通量は8月に過去最大の落ち込みを記録した。
ECBはこの統計を初め、金融環境引き締まりの兆候を精査するだろう。米国債利回りの急上昇で欧州の借り入れコストは上昇しており、これ以上の利上げは必要ないとの見方を裏付ける材料となっている。
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