- 2025/06/10 掲載
豊田織が株主総会、社長「TOB価格は本源的価値反映」 疑問の声も
[10日 ロイター] - 豊田自動織機は10日、愛知県高浜市で株主総会を開いた。同社が受け入れたトヨタグループによる買収提案と非公開化を巡り、妥当性や株式公開買い付け(TOB)価格などについて、長期保有の株主などから疑問の声が相次いだ。
伊藤浩一社長は「短期的な成果や単純な収益拡大にとらわれず、より中長期的な視点でもっと大胆にスピードのある取り組みを進める」と非公開化の意義を強調した。TOB価格については「本源的価値を反映した」とし、会社と独立した特別委員会それぞれが金融、法務アドバイザーを設置・検討して「十分かつ真摯な交渉を重ねた結果の価格」などと説明した。TOBに応募するかどうかは「株価が大きく上に振れたので、中立の立場だ」とした。 想定通りに非上場化の計画が進めば、今回の定時株主総会は上場会社として最後になる可能性が高い。 総会は午前10時に始まり、同社によると、所要時間は113分で過去最長となった。株主は前年より96人多い351人が出席し、16人から24の質問があり、これまでで最多だった。
ある株主は「会社はやっぱり株主のもの」であり、豊田織機の株を「一生の宝物、財産として息子へ引き継ぎたいという気持ちで毎月少しずつ積み立ててきた。少数株主への配慮、保護をもう少し考えていただきたい」と訴えた。
伊藤社長はこうした株主の声に対し、「決して少数株主をないがしろにしたわけではないが、総合的な決断をして、新しい道に踏み出そうという決断をした」と語った。
TOB価格は1株1万6300円。豊田織機の株価は4月下旬の買収を巡る一部報道で上昇し、公式発表直前は1万8000円台だった。報道には「多くの間違いが含まれていた。会社が発表したことではない」とし、市場価格が歪められたと指摘。非公開化の計画は「ごくごく限られた人数で検討していた。実際にどうして間違った情報としてリークされたのかというところは非常に残念」と述べた。
株主に対して非公開化に向けた詳細な説明の機会を設けるかどうかに関しては、資料を読んでいただきたいとし、「特に強い要望があれば、個別の対応は進めるが、まとめて何か(あらためて説明する)機会を設定するということは今の時点では考えていない」とした。
別の株主からは、非公開化に向けてトヨタ自動車の豊田章男会長が出資することは「創業家への回帰、トヨタが支配するのではないか」との指摘も出たが、伊藤社長は「支配するということではない」と否定。豊田会長の出資は非公開化計画への賛同と同時に、豊田織機の「今後の挑戦への強いコミットメントの証だ」と話した。
非上場化後に再上場する可能性を問われた伊藤社長は「今回の(非公開化を計画する)過程で、再上場を検討したことはない」としたが、「さまざまな選択肢を排除しているわけではない。まずは今回の非公開化が成立した折にはより強い姿を見せて(情報を)発信していきたい」と語った。
豊田織機株の非公開化計画は、トヨタグループ15社が株式を保有するトヨタ不動産とトヨタの豊田会長が新たに設立する持ち株会社が実質的にTOBを実施し、完全子会社化を目指す。非公開化にかかる総額は約4兆7000億円。TOB後に臨時株主総会を開いて株式併合を決議し、26年2月以降に残る豊田織機の株式をスクイーズアウト(少数株主の締め出し)で非公開化する計画。26年夏ごろには新体制となる予定。
TOB価格を巡っては、報道前の価格と比べると上回るが、報道後の公式発表日の終値を約11%下回る。一部の海外株主からも、TOB価格は適正ではなく、保有不動産や中核事業の価値評価が十分に反映されていない、トヨタグループの創業家と経営陣が少数株主を強制排除しようとしているなどと問題視する声が出ている。
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