- 2026/06/07 掲載
英ケンブリッジ大、AIで未知のウイルスに対応可能な「万能型ワクチン」開発成功
AIにより設計されたワクチンがヒトに投与された世界初のケース
臨床試験は英国のサウサンプトンおよびケンブリッジにある臨床研究施設にて実施され、18歳から50歳の健康なボランティア39名が参加した。今回の試験で用いられたワクチン候補「pEVAC-PS」は、注射針を用いないマイクロ流体ジェットシステムを介してDNAワクチンとして投与された。
試験の結果、重大な副作用や予期せぬ毒性は報告されず、ワクチンが安全かつ高い耐容性を持つことが確認された。さらに被験者の免疫応答を評価したところ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やSARSウイルスに加え、現時点でヒトへの感染が確認されていないコウモリ由来の近縁ウイルスに対しても免疫応答の発現が確認された。
この画期的なワクチンの根幹をなすのが、研究チームが「スーパー抗原」と呼ぶAI生成の人工抗原である。従来のワクチン開発では、流行している特定のウイルス株の遺伝子配列を基に抗原を作成していたため、ウイルスの変異に伴ってワクチンの有効性が低下し、継続的なアップデートが必要であった。
これに対し新たなアプローチでは、世界中の監視プログラムから収集されたウイルスゲノムデータを機械学習で解析し、グループ全体に共通する進化の過程で変化しにくい構造的特徴を抽出した。この不変領域を標的とすることで、現在流行しているウイルスだけでなく、将来発生し得る未知の変異株に対しても効果を持続させることが可能となる。
研究の科学リーダーを務めるケンブリッジ大学のジョナサン・ヒーニー教授は、この技術によりワクチン開発がウイルスの変異を後追いする手法から、将来の脅威に備える先制防御型へと転換したと述べている。一方で、今回の第1相試験は安全性と初期の免疫原性を確認する初期段階のものであるため、実際の感染予防効果や広範な防御能を証明するためには、さらに多様な参加者を対象とした大規模な第2相試験の実施が必要とされている。
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