• 2025/06/11 掲載

米中通商協議、輸出規制緩和へ枠組みで合意:識者はこうみる

ロイター

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[11日 ロイター] - 米中両政府は10日、貿易問題に関する2回目の協議を実施した。両国は5月にスイスで結んだ合意内容を履行することで一致した。

市場関係者に見方を聞いた。

◎予想通りで市場に優柔不断さ

<IG(シドニー)の市場アナリスト、トニー・シカモア氏>

ジュネーブ合意の条件を維持するのであれば、米国の中国製品に対する関税は一定期間30%にとどまり、中国の米国製品に対する関税は10%になる。それぞれ145%と125%から引き下げられるため、素晴らしいことだ。

私にとって、それはおそらく市場のコンセンサスだった。そして今、人々はドルを買うのか売るのか考えを巡らせており、その優柔不断さが少し反映されていると思う。

私はジュネーブ合意の延長を考えていたが、それが現実になったようだ。そのため、米国株式市場は今のところ持ちこたえている。それでも過熱感があり、下げる必要があると感じている。目覚ましい上昇が続き、2月に付けた過去最高値に迫りつつあり、一息つくのは理にかなっているだろう。

協議の結果は予想を上回ることも下回ることもなかったため、米株先物にはややためらいが見られている。

◎首脳の信頼回復が鍵、世界経済への悪影響続く

<ナショナル・オーストラリア銀行(NAB、シドニー)の為替戦略責任者、レイ・アトリル氏>

悪魔は細部に宿る。握手による合意に過ぎない。重要なのは、これが習近平国家主席とトランプ大統領の信頼関係を再構築する助けとなるかどうかだ。

ジュネーブでの合意が発表されて以降、両首脳の信頼関係が損なわれていることは明らかだ。揺るぎない新たな米中通商合意がまとまりつつあると考えるのは、あまりにも時期尚早だ。

今年はたびたび合意への期待が浮上したものの、実質的な進展は見られていない。もしくは、合意が成立したように見えても逆戻りしている。

結局のところ、今後数週間から数カ月でどのような合意が成立しようと、世界の関税を巡る状況は、トランプ政権発足前との比較で格段に悪化するというのが、依然として当社の基本シナリオだ。世界の経済成長に悪影響を及ぼす関税環境が続くだろう。

◎合意の詳細待ち、市場はリスクオンなりきれず

<関西みらい銀行 ストラテジスト 石田武氏>

ヘッドラインが出た瞬間はマーケットが動くかと思ったが、何を合意したのか、正直まだ詳細がよく分からない部分がある。例えば包括的に合意して関税を下げるとなれば非常にポジティブだが、期限をもう90日延ばして交渉継続となれば拍子抜けだろうから、現時点では何とも言えない。

ただ最近は中国側からもトランプ米大統領側からも前向きなコメントが出ており、全く何の進展もなく先延ばしということはなく、多少は成果が出たという形をとりそうだ。合意の詳細が出てくれば、方向性としてはリスクオンで反応するのではないか。安全資産の日本国債(JGB)にとっては重しになるだろう。

ただ株や為替と違ってJGBについては現在、関税というより、選挙を控えて現金給付や減税、発行減額やバイバックといったことがメインの注目材料となっている。関税のニュースに反応するとしても、「お付き合い程度」で株や為替の動きに追随する感じではないか。

◎半信半疑で反応鈍い、ドル148円半ばが鍵

<ふくおかフィナンシャルグループ チーフストラテジスト 佐々木融氏>

米中通商協議で合意したとの発言が両国当局者から出ているが、その内容ははっきりせず、合意そのものも首脳判断待ちとあって、現時点では何とも判断しにくい。通商交渉はすぐに状況が変わってしまうことがこれまでにもあり、市場はまだ半信半疑の状況で、反応も現時点では限られたものとなっている。

今後、実際にポジティブな内容を伴う合意に達することができれば、ドル高/円安が進むことに変わりはないだろう。ドルが5月高値の148円半ばを上抜ければ、投機の円買いが一段と巻き戻される可能性があるとみている。

◎中国株に買い戻し余地、日経3万9000円回復が焦点に

<東海東京インテリジェンス・ラボ シニアアナリスト 澤田遼太郎氏>

米中協議の進展がプラスに働き、きょうの日経平均はしっかりした展開となっている。まだ詳細は米中から出そろっておらず分からない点もあるが、ひとまずは素直に好感する買いが先行し、特に中国関連銘柄の一角が改めて評価されて買われている。正式にトランプ米大統領の合意が得られれば、さらに関連株が買い戻される余地はあるだろう。

日経平均は5月13日、29日の高値を上抜けており、上方向を試す展開になるのではないか。米中の協議に加えて日米も今週末に交渉が大詰めを迎えるタイミングで、仮に日米交渉でポジティブな材料が出てくれば、日経平均がもう一段上昇する動きも期待できるとみている。

目先は、節目の3万9000円台が回復できるかがポイントとなりそうだ。同水準を維持できれば3万8500円の壁は越えたという評価になり、堅調な展開が続くとみている。

◎包括的合意は困難、再び緊張高まる

<コモンウェルス銀行(CBA、シドニー)の通貨ストラテジスト、キャロル・コン氏>

現在の環境では、潜在的な通商合意に向けた進展が示唆されれば、市場にはプラスになるだろう。詳細は乏しいが、両国が協議を続ける限り、市場は好感するとみられる。

ただ、包括的な通商合意に達するのは、依然として非常に困難で、長い時間がかかるだろう。この種の包括的な合意は通常、成立までに何年もかかる。このため、今回のロンドンの協議で合意した枠組みが包括的なものになるとは思えない。緊張はいったん緩和するかもしれないが、数カ月以内に再び緊張が高まることは間違いない。

◎詳細が重要、当面リスク資産を支援

<ペッパーストーン(メルボルン)の調査責任者、クリス・ウェストン氏>

悪魔は細部に宿るだろうが、市場の反応が鈍いことからこの結果は十分に予想されていたのだろう。

明らかにポジティブな結果だが、S&P500先物の反応が鈍く、人民元や豪ドルも小動きで、ジュネーブ合意の枠組みに至るのは十分織り込まれていたことを示唆している。特に米国向けレアアース(希土類)の供給量や、それを受けた米国製半導体輸出の自由度など、詳細が重要になるが、米中協議の見出しが建設的である限り、当面リスク資産を支援する見込みだ。

中国株の反応が物語る可能性があり、米株先物はきょうの中国市場の動向を密接に追うことになるだろう。

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