- 2025/06/11 掲載
アングル:砕氷船「日本丸」、3万8000円台の壁に挑む 海外勢支えに力強さも
[東京 11日 ロイター] - 日経平均が3万8000円を回復した後も、じりじりと上昇している。過去の累積売買が多く、戻り待ちの売りが出やすい価格帯のため、「壁」と表現されることが多いが、海外勢の中長期資金の流入を支えに力強さもみえる。さながら水面の氷を割りながら進む「砕氷船」の歩みのようでもある。米S&P500が強気相場入りしたことで、今後さらに短期勢の買いを促し、戻りを試す展開を読む楽観論も出ている。
日本株は、今年4月の急落からの戻り相場で米国株に引けを取らない動きをみせている。日経平均が22%、TOPIXが21%、それぞれ上昇。ナスダック総合の26%高には見劣りするが、ダウ工業株30種の12%高、S&P500の19%高を上回るパフォーマンスだ。
背景にあるのは、海外勢による現物株の旺盛な買いだ。東証がまとめる投資部門別売買状況では、4月の急落後から現物株を9週連続で買い越し、累計で3.4兆円を買い越した。昨年8月の急落から今年3月までの5.1兆円売り越しから一転、買い戻しが進んでいる。
りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャーは背景のひとつとして「米国一極集中の反省もあり、国際分散投資へ見直す動きがありそうだ」との見方を示す。トランプ米大統領の政策の不透明感やディープシークショック、「米国売り」などが重なったことで株安が強まった経緯から、米国株に投資資金を集中することのリスクが意識された。昨秋の米大統領選から春先の波乱相場までに独DAX指数が2%上昇したのに対し、S&Pは12%下落した。
米株の上昇に伴って、海外勢は地域に関係なく先進国株のエクスポージャーを引き上げてきているとJPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストはみている。株式に振り向ける資金を増やす中で「(一定の比率で)日本株にも資金が流入してきている」という。
米国株の一段高を後押ししそうなのが、S&Pが節目の6000を超えたことだ。同水準は、4月安値から2割高の水準で、強気相場入りの目安とも重なる。これまで慎重スタンスだった商品投資顧問業(CTA)などトレンドフォロー型の海外短期筋は、米株で追随買いが必要になり「グローバルで株の持ち高が不足しているとの判断になりやすい。慎重であることの方が、分が悪くなり始めている」(JPモルガンの高田氏)との見立てだ。
<日経平均は「壁」ゾーンに>
一方、日経平均は、昨秋から半年近くもみ合った3万8000円以上のゾーンに差し掛かっている。累積売買代金が大きく、ヤレヤレの売りが出やすい価格帯となる。5月半ばに大台を回復して以降、1カ月近く大台付近での滞留が続いている。
とりわけ「壁」が厚いとみられているのは3万8500━3万8999円で、これを上回れば、日経平均の上値の重さは次第に和らぐとの見方もある。ただ、その「壁」を乗り越えていくには「相応の規模の商いと材料が必要だろう」とみずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストはみている。
東証プライム市場の売買代金は、6月に入って4兆円を上回ったのが3営業日のみで、平均では4兆円を下回る。チャート上では、昨年7月高値と12月高値を結ぶトレンドラインで上値を抑えられ続けている。
商いが膨らむには「全体相場で手掛かりになるような材料が必要」(みずほの中村氏)になる。引き続き注目されるのは、米関税を巡る各国との交渉の行方だ。フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドは、少なくとも当初よりネガティブな結果になることはないだろうとの見通しを示す。買い遅れた投資家は多いとみられ「株価の方向性としては、上方向ではないか」と話している。
もっとも、S&Pが再び過去最高に接近する動きとなっていることへの警戒感も、市場では根強い。ここまでの戻り局面は「過度な悲観が収束し、勢いが余って戻ってきただけだろう」と、いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長はみている。
トランプ政策の不確実性はまだ続くとみられる上、ファンダメンタルズが相互関税発表前の3月の状態に戻ったわけでもないとして「手放しでここから買おうとはなりにくい。海外短期筋が(株買いに)入ってくるとしても、おっかなびっくりではないか」と、秋野氏は話している。
(平田紀之 編集:橋本浩)
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