- 2025/06/12 掲載
インタビュー:米関税で利上げ「相当遠のいた」、日本経済の正念場は来年か=政井元日銀委員
[東京 12日 ロイター] - 元日銀審議委員の政井貴子氏(SBI金融経済研究所理事長)は12日、ロイターのインタビューに応じ、米関税政策の日本経済への影響が懸念される中、日銀の追加利上げは「相当遠のいた」と述べた。トランプ政権の関税が自動車産業に打撃を与えるため、日本経済は2026年に正念場を迎える可能性があるとし、関税の影響で米国の需要が落ち込めば、日本の輸出や生産に悪影響を及ぼすとの見方を示した。
トランプ米大統領による4月2日の「相互関税」表明以降、公表された日本の経済指標にはその影響はまだ明確には出ていない。だが、政井氏は「関税の影響がパス・スルー(価格転嫁)するための時間は半年から1年」かかるとし、当初影響が限定的でも時間が経つごとに影響が広がっていくだろうと指摘した。
特に裾野が広い自動車産業に対する関税措置は日本の生産や経済に「少なからず悪影響を及ぼす」ほか、企業心理の悪化を通じて「他業界に与える影響、賃上げや消費への影響も見極める必要がある」と話した。
米関税の悪影響を懸念して多くの中央銀行が利下げしているなど、世界経済は「緊迫した状態」にあると指摘。今後も景気が「緩やかに拡大していく」と言い切れるのか、「日銀にとっては難しい判断になってくる」と述べた上で、日銀は「しばらく利上げできない可能性が高い」とした。米国による他国との関税交渉の帰趨次第では、2025年だけでなく2026年中も利上げできない可能性もあると述べた。
現在進行中の物価高については供給ショックによる部分が大きく、世界経済が減速していけば原油などの資源価格も下落し、コストプッシュ圧力も減衰していくだろうとし、「焦って利上げする必要はない」と語った。
むしろ米関税措置によって日本経済が大きく落ち込んだ場合、利下げを迫られる可能性もゼロではないと指摘した。こうした状況に陥った場合、利下げしないで済むことが日銀にとっては「ベストシナリオ」だが、代わりに「当面の間、実質金利を低く保つことで経済を下支えするといったガイダンスを示す必要が出る可能性はある」とも述べた。
政井氏は米国の高関税政策が長期化する可能性を念頭に「当面利上げせず、実質金利を低く保つことで経済の構造転換を支援していくことが必要だ」と語った。自動車以外の財の競争力を上げ、輸出産品を多様化するための取り組みや、外需に依存しすぎず内需を拡大する方策が必要で、日銀は「利上げができる環境を作るために政府の対策と整合的な政策をとるべきだ」と話した。
政井氏は2016年から2021年まで日銀審議委員を務めた。
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