• 2025/09/11 掲載

アングル:日銀ETF売却、透ける「少額・段階的」案 時期は不透明

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Takahiko Wada

[東京 11日 ロイター] - 日銀は保有する上場投資信託(ETF)の処分に向け、水面下で検討を進めている。銀行保有株の売却を7月に終え、「(ETFやREITの処分も)同じ考え方で取り組んでいくことになる」(氷見野良三副総裁)との姿勢で、銀行保有株の売却にならって、少額ずつの売却が想定されているもようだ。ただ、売却の開始時期についてコンセンサスは形成されていない。ゴーサインはいつか、日銀幹部らの発言にしばらく注目が集まる。

<「知見」を生かす>

氷見野副総裁は2日の講演で、ETFや不動産投資信託(REIT)の処分の仕方を検討していきたいと語った。

この時の発言で注目されるのは、ETFの扱いについて、銀行保有株の処分の過程で得られた「知見」も生かして検討してきたいと述べたことだ。

日銀は金融危機時に買い取った銀行保有株の売却を今年7月に終えた。この際の「知見」として日銀がみているのは、少額ずつの売却であれば市場に波乱が生じないということだ。

銀行保有株の年間売却額を簿価ベースで見れば、直近5年の平均は約1300億円。日銀では、小規模の売却だったからこそ、市場に波乱が起きなかったと受け止められている。もっとも、ETFは簿価で37兆円。約2兆4000億円だった銀行保有株の売却ペースをそのままETFに当てはめるのは現実的でないとされる。

日銀はETFの処分のあり方を自身が定めた基本要領に明記している。適正な対価、日銀の損失発生の回避、市場にかく乱的な影響を与えることの回避――の3原則だ。

この原則を踏まえれば、少額ずつの売却が妥当な案に映る。一方、立憲民主党が主張する保有ETFの政府への移管案や一部の日銀OBが主張した国民への配布案の実現には、世論の盛り上がりを背景とする政治の強いリーダーシップが必要となる。与党の政権基盤が不安定な現在の状況下で、実現性は乏しいとみられる。

<タイミング>

もう1つ注目されるのが売却開始のタイミングだ。7月の決定会合で植田和男総裁は「時間をかけて検討」としたが、今回、氷見野副総裁は「時間をかけて」とは言わなかった。これをETF処分の早期開始の示唆と受け止める市場関係者が出ている。

ETFの買い入れは中央銀行として異例な政策であり、巨額の買い入れの結果、日本の株式市場でのプレゼンスが大きくなった。このため、日銀では売却をどこかで始めること自体に目立った異論はない。

7月会合後、日経平均株価が史上最高値を更新する中、日銀ではETFの処分を巡る議論がしやすくなったとの声が一部で聞かれた。しかし、石破茂首相の退陣表明で政治状況が一変、政局が不安定な中であえて処分を決定するハードルは高くなる。日銀内では保有を続けていても問題はなく、急いで決める必要はないとの意見も根強い。

<最後の課題、国債と異なる性質>

日銀は昨年8月から国債買い入れの減額に着手した。保有ETFの処分をどのように行うかは異次元緩和で膨張したバランスシートを平時に戻していくための最後の課題になる。日銀では、国債買い入れの減額とETFの売却とは性質が異なり、市場への事前の情報発信の仕方も分けるべきだとする向きもある。

国債については、日銀が大量に保有した状況が続けばそれに伴うストック効果で金利に低下圧力が掛かる。このため、市場と丁寧に対話しながら国債の保有量を減らし、市場の金利形成の自由度を取り戻していく必要がある。実際に日銀は毎年、「中間評価」しながら減額ペースを決めている。

一方で、ETF買い入れの政策目的は株式市場におけるリスクプレミアムの抑制にあり、政策としての効果は買い入れた時点で終わる。保有を続けても株価への影響はないというのが日銀の立場だ。このため、植田総裁が決定会合時に「議長指示」を出してETFの具体的な処分方法を事務方に指示したり、正副総裁がより具体的な処分方針を決定会合に先立って説明する可能性は低いという。

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