- 2025/09/17 掲載
アングル:外国投資家が中国株へ本格再参入うかがう、3年前は「投資不可能」
[香港 16日 ロイター] - 外国投資家が中国株式市場への大々的な再参入を検討し始めている。3年前、中国株を「投資不可能」とみなして資金を引き揚げたが、テック銘柄の投資機会や米国資産以外に投資を分散する必要性の高まりが背中を押している。
今年に入り、中国では人工知能(AI)が普及し、半導体や革新的な医薬品の開発も進んだことで、米中貿易戦争や米政府によるハイテク製品の対中輸出規制があっても、中国の技術発展は妨げられていない、と外国投資家の間に安心感が広がった。
米中貿易戦争は「休戦」となり、中国国内では金融環境が緩和されているため、市場の地合いがさらに改善。その結果として代表的な株価指数の上海総合指数は先週10年ぶりの高値を記録し、香港ハンセン指数も4年ぶりの高値に達した。
これまで株高を主導してきたのは国内投資家だが、外国投資家の心理好転は、株価を一段と押し上げる力になり得る。
元ヘッジファンドマネジャーで今はニューヨークに拠点を置くファミリーオフィスの資産運用に従事するブレット・バーナ氏は、既に外国投資家の「先発組」は中国株に戻っていると指摘。今年の強気相場に魅せられたほか、資金が混雑する米国株から投資の多角化を図ろうとしたからだと分析した。
バーナ氏は「中国(株)は興味を引く。なぜなら少なくとも本土A株は、他の世界(の株)との相関性が非常に薄いためだ」と語り、欧米資本が中国の資本市場にアクセスできるようにする投資プラットフォームの立ち上げを計画していると付け加えた。
ファンド設立や資金フローに関するデータからも、香港を含む19兆ドル規模の中国株式市場に向けられた熱気の高まりがうかがえる。
モルガン・スタンレーの報告では、世界のヘッジファンドによる8月の中国株購入規模は半年ぶりの大きさだった。
一方モーニングスターのデータによると、中国を除く新興国投資ファンドの新規設立数が今年は8本と、昨年の21本、2023年の16本を下回っており、中国以外の新興国投資需要は相当冷え込んでいることが分かる。
アリアンツ・グローバル・インベスターズの中国ファンド部門で最高投資責任者を務めるツェン・ユチャン氏は「1年前、人々は株価指数から中国を除外したがった。今や中国は(無視できない)単独の資産クラスとみなされている」と述べた。
<強まる関心>
ロンドンに拠点を置く資産運用会社(預かり資産200億ドル)のポーラー・キャピタルのファンドマネジャー、ジェリー・ウー氏は、昨年終盤に中国の投資判断を「アンダーウエート」から強気方向に転換し、今年は新興国ポートフォリオにおける中国株比率を20%台前半から30%超まで高めたと明かした。
同社が2月に開いた年次会議の中国セッションに参加した顧客は23年に比べると2倍に増えたという。
ウー氏は、ディープシークが低コストで能力の高いAIモデルを披露したことで、中国の技術革新に関連する資産が再評価され、AIからバイオテック、ロボットまで幅広い銘柄の勢いが加速していると説明した。
ケンブリッジ・アソシエーツのシニア投資ディレクター、ベンジャミン・ロー氏は、23年には極めて限られた件数だった中国ファンドに関する顧客からの問い合わせが、今年これまでに30件前後もあったと明かす。
ロー氏は、アジア地域以外の運用担当者の多くは年内に中国と香港を訪れて投資機会を探ろうとしているが、彼らの一部がそうした動きをするのはコロナ禍以降で初めてだと述べた。
ズィーベン・アドバイザーズは中国株について「投資が可能だと確認された。本土市場への国際的な参入が加速しつつある」と記した。
もっとも中国が長年抱える問題は依然としてくすぶっている。8月の鉱工業生産や小売売上高などの指標は、実体経済がなお低調なことを物語る。
今年1─5月の中国に対する外国からの直接投資は前年同期比で13.2%落ち込み、7月には中国政府が投資減少の流れを変えるための対策を打ち出さざるを得なくなった。
脆弱な経済がその主な理由で、外国資金は「先発組」が入っているものの、それが長期的な資本流入にまではまだつながっていない。
CLSAのチーフ株式ストラテジスト、アレクサンダー・レッドマン氏は、中国経済にデフレ圧力があるので、投資判断を「オーバーウエート」にはできないと話している。
ポーラー・キャピタルのウー氏は、来年以降も株高が続くには、AIブームの好影響が経済全体に波及する必要があるとの見方を示した。
アリアンツ・グローバル・インベスターズの中国ファンド部門のポートフォリオマネジャー、チェン・ユー氏は「外国資金は玄関口で状況を見守っているところだ。彼らはまだ入ってきていないが、少なくとも戻ることを考えてはいる」と述べた。
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