- 2025/09/19 掲載
日銀、保有ETFの売却開始を決定 金利据え置きには2人が反対
Takahiko Wada Takaya Yamaguchi
[東京 19日 ロイター] - 日銀は18、19日に開いた金融政策決定会合で、保有する上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の売却を開始することを全員一致で決定した。金融危機下で買い取った銀行保有株の売却の知見を踏まえ、ETFは簿価で年3300億円程度ずつ売却していく。
政策金利である無担保コールレート翌日物の誘導目標は0.5%程度で維持することを賛成多数で決定した。高田創委員と田村直樹委員が0.75%に利上げする議案を提出したが、反対多数で否決された。
<ETF売却、時価ベースなら130年超かかる見通し>
日銀は国債の買い入れ減額を昨年8月から進めており、ETFの処分は異次元緩和で膨張したバランスシートの適正化に向けた最後の課題となっていた。
日銀は年間売却ペースについて、ETFは簿価で3300億円程度(時価で6200億円程度)、REITは簿価で50億円程度(時価で55億円程度)とすることに決めた。時期の分散に配慮しつつ、各銘柄の保有割合におおむね比例的なかたちで売却していく。所要の準備が整い次第、処分を開始する予定。
市場の状況に応じ売却額の一時的な調整や停止を行うことができるとしたほか、今後の売却の経験などを踏まえ、金融政策決定会合で売却ペースを見直すことがありうるとした。
日銀は、金融危機下で買い取った銀行保有株式の売却を今年7月に終了。氷見野良三副総裁が9月2日の講演で、ETFの扱いについて、銀行保有株の処分の過程で得られた「知見」も生かして検討してきたいと述べる一方、「時間をかけて」と言及しなかったことで市場で早期の売却開始の思惑が浮上していた。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストの試算によれば、日銀保有ETFの時価総額は16日終値ベースで86.0兆円、含み益は48.8兆円。時価で単純計算すると売却完了まで139年かかることになる。
<政策金利据え置きは5会合連続>
政策金利の据え置きは5会合連続。米国の高関税政策による米国経済や日本経済への影響度合いを引き続き見極める必要があると判断したとみられるが、今回は2人の審議委員が利上げを主張した。
高田委員は、物価が上がらない「ノルム」(規範)が転換し物価安定目標の実現が「おおむね達成された」と主張した。田村委員は物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づける必要があると主張した。
日銀は声明文で、経済や物価の見通しを維持した。先行きの経済については、各国の通商政策等の影響を受けて海外経済が減速し、日本企業の収益なども下押しされるもとで「成長ペースは鈍化する」とした。その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで成長率を高めていくとの見通しを示した。
基調的な物価上昇率については「成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩む」ものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから「徐々に高まっていく」とし、2027年度を最終年度とする展望リポートの「見通し期間後半には物価目標とおおむね整合的な水準で推移する」との見通しを維持した。
日銀はその上で、リスク要因として、特に各国の通商政策等の今後の展開やその影響受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性が「高い状況」が続いており、その金融・為替市場や日本経済・物価への影響は「十分注視する必要がある」と指摘した。
*経済・物価・リスク要因の記述を追加しました
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