- 2025/09/19 掲載
アングル:日銀利上げ判断、米クリスマス商戦がヤマ場か 10月の可能性も意識
[東京 19日 ロイター] - 19日に5会合連続で政策を据え置いた日銀にとって、利上げ再開への最大の障害は米国経済の下振れ懸念だ。植田和男総裁は会見で、米国の関税影響の見極めにどれくらいの時間が掛かるかは「不確実性が高い」と述べたが、日銀では11月末から始まる米国のクリスマス商戦が見極めのヤマ場になるとの見方が出ている。国内の情勢次第では、クリスマス商戦のハードデータまで確認せず、10月会合や12月会合で利上げに踏み切る可能性も意識されている。
<根強い米経済下振れ懸念>
足元の日本経済は日銀の想定に沿ったものだが、米経済の動向に振らされやすいことが、様子見姿勢の一因になっている。2008年のリーマンショックでは、震源地となった米国より日本の方が大幅なマイナス成長になった。高水準の企業収益は円安傾向が支えており、大幅に円高に振れれば、関税の直接的な影響が及ぶ輸出企業の収益に影を落としかねない。
現時点で、こうした懸念は現実のものとなっていない。17日に終わった米連邦公開市場委員会(FOMC)は市場が想定した範囲の結果となり、外為市場での円高進行は限られた。米国の経済指標では雇用の減速傾向こそ鮮明だが、小売売上高が堅調に推移するなど他の指標への影響は今のところ限定的だ。
しかし、日銀は、高い関税をどこかの企業が負担しなければならない以上、現状は収益で吸収している企業にも限界が訪れ、影響が顕在化するとみている。現時点で影響が限定的だからと言ってこのまま影響が出ないとは言い切れないという考え方だ。
植田総裁は会見で、関税の物価への転嫁が進んだ時にどういう姿になるか、まだ必ずしも見えていないと指摘。「標準的な見方では今後(影響が)出て、それに伴って消費へのマイナスの影響もあるだろう」と述べた。
<米クリスマス商戦、見極めのタイミング>
焦点は米国の経済・物価動向をいつまで注視するかだ。日銀では、11月末から始まる米国のクリスマス商戦の動向が関税の影響を見極める上でのヤマ場になるとの見方が出ている。個人消費が盛り上がるクリスマス商戦でも小売売上高が強ければ、米国の関税影響は限定的と判断していいのではないかとの考えだ。
12月の米国の消費動向をハードデータで確認するなら、年明けを待つ必要がある。しかし、クリスマス商戦について、米国で事前に発表される業界団体の小売売上高の予想や日銀自身による調査などを確認することで足り、ハードデータを見る必要は必ずしもないとの声が出ている。
日銀短観、日銀支店長会議、自民党の新総裁選出、新政権発足と10月の決定会合に向けて重要イベントが相次ぐが、米国のクリスマス商戦についても、昨年通りなら米国の業界団体によるクリスマス商戦での売上高の事前予想が10月半ばに出てくる。
植田総裁は会見でデータや情報の見極めについて「最後まで見なければわからないのではなく、逐次入ってくる情報に基づいて全体を予想し、その予想に確度が持てれば政策の判断をしていける」と話した。クリスマス商戦の動向についても、例えば「日本からの船便の荷動きでもある程度分かる」とも述べた。
<物価警戒に広がり>
米経済の動向を見極めている間も、インフレ上振れリスクへの警戒感が日銀で後退しているわけではない。19日の決定会合では、高田創審議委員、田村直樹審議委員の2人が0.75%への利上げを提案。田村委員は物価上振れリスクを指摘、高田委員は「物価安定目標」の実現は概ね達成されたとしている。
日銀では米経済を巡る不透明感が続く中でも、新米価格の動向や新政権が打ち出す財政政策の方向性などほかに考慮すべき要素があるとの声もある。日銀はこれまで基調的な物価上昇率について、関税の影響による経済下押しで「伸び悩む」と想定してきたが、特に伸び悩むことなくすでに2%近傍に到達しているとの指摘も出ており、10月会合での利上げの可能性も意識される。
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