- 2025/11/11 掲載
インタビュー:インドのイエス銀を軸に反転攻勢、アジア出資「甘くなかった」=三井住友FG副社長
[東京 11日 ロイター] - 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が、今年5月に出資したインドのイエス銀行を起点にアジア事業の立て直しに乗り出そうとしている。海外事業を統括する百留秀宗副社長はロイターとのインタビューで、「経済成長だけでいけるほど甘くはなかった」とこれまでの出資案件を振り返り、アジア戦略の見直しを急ぐ考えを明らかにした。
SMFGはインドネシア、インド、ベトナム、フィリピンを対象とする「マルチフランチャイズ戦略」で2028年度に1200億円という利益目標を掲げるが、グローバル事業部門共同事業部門長の百留氏は、「現時点ではその数字に比べると非常に弱い」と説明。アジアの出資先全体のROE(自己資本利益率)は足元で3.3%にとどまり、25年度目標の9.5%を大きく下回る。4カ国での出資先の収益性が軒並み伸び悩んでいる。
百留氏は「出資が順調に進んでいるとは言えず、ビジネス面の改善が必要だ」と説明。現地での事業運営力が成否を左右したとし、「出資後はかなりハードレッスンを受けた」と話した。
反転攻勢の核と位置付けるのが、傘下の三井住友銀行を通じて25%弱出資したイエス銀行だ。日本の銀行として初めて、本格的にインドの商業銀行に出資した。ノンバンクではなく預金基盤を持つ銀行を選んだのは、「預金を集めるフランチャイズ(拠点)が重要」との認識からだった。
過去の教訓を踏まえ、出資価格の精査には慎重を期した。百留氏は「これまでのアジア案件は評価額が純資産倍率の2─3倍と高かったが、今回は勝てる水準で実行した」と説明。これまでに出資した他の案件でも「施策を打っている」とした。
百留氏がイエス銀行の課題の1つに挙げたのが、資金調達コストが高いこと。利率が低い当座・普通預金を増やすことが不可欠だと指摘し、日系企業がインド企業と取引する際、売掛債権などを担保にファイナンスを提供するなどして企業に深く入り込むことで、預金の積み上げにつなげたいとの考えを示した。
リテール分野では、日本で展開する総合金融サービス「オリーブ」のように、カード決済や証券口座を組み合わせた仕組みで資金を囲い込む。安定した低コストの預金基盤を築きつつ、採算が良い分野への貸出しを進めることで、目標とするROA(総資産利益率)1%の早期達成を目指す。
イエス銀行はインド全土で1200超の支店ネットワークを展開し、主要工業団地の近隣にも拠点を持つ。百留氏は「広範な支店網を活かし、インド進出企業の取引や現地従業員の口座を取り込むことで成長を加速させる」と語った。イエス銀行の収益改善に伴う利益還元効果にも期待を示す。
<インドの戦略性>
自動車メーカーなど日本企業はサプライチェーン(供給網)の中国依存を減らすため、製造・輸出拠点をインドへ移す動きを強めている。インド政府がSMFGに期待するのも、中堅・中小を含めた日系サプライヤーのインド進出の呼び水になることであり、国内の産業基盤整備につながると踏んでいる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が25年に実施した調査によると、事業拡大先としてインドを挙げた大企業は33.7%と、米中や東南アジアを上回り首位だった。百留氏は「日本企業と話しても、インドへの関心が非常に高くなっているのは間違いない」とした上で、「中東やアフリカへの地理的な近さも有効に働き、日本企業の進出がより増えていく」と予想した。
SMFGは08年にベトナム、13年にインドネシアの銀行に出資し、「アジアに第2、第3の三井住友銀行を作る」としたアジア中心のマルチフランチャイズ戦略を打ち出した。同戦略を主導した太田純前社長は23年に急逝したが、人口減少が進む日本からアジアに成長機会を求める構想は今も引き継がれている。
百留氏は「アジアのどこで成長するかという場合に、やはりインドは非常に重要だと思っている」と述べ、インドを同戦略の中核に据える考えを強調。イエス銀行について「(SMFGの)国際的ネットワークを生かし、グローバルなコネクティビティが最も高い銀行になってもらいたい」と話した。
*10日にインタビューしました。
(浦中美穂、岡坂健太郎、Anton Bridge 編集:久保信博)
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