• 2026/04/08 掲載

アングル:パキスタンで電動バイク販売急増、ガソリン価格高騰で

ロイター

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Ariba Shahid Sudarshan Varadhan

[イスラマバード/シンガポール 7日 ロイター] - 米国とイスラエルから攻撃を受け、イランがホルムズ海峡を通る船舶の航行を事実上封鎖した数日後、約1400キロ離れたパキスタンの電動バイク販売店2軒には問い合わせが殺到していた。

パキスタン北部ラワルピンディでガソリンを燃料とするバイクを改造し、バッテリー駆動のモーターを取り付けているハシーブ・バティ氏は、3月の販売が70%と急増したと語った。また創業から7年の電動バイク小売フランチャイズを経営するアリ・ゴハル・カーン氏にとって、最近の増収幅は過去最高だ。

カーン氏は「人々は、近い将来にガソリンが全く手に入らなくなるかもしれないという不安を抱いている」と指摘した。

イラン攻撃に端を発した中東紛争によって世界の燃料価格が急騰し、インフレや新型コロナウイルス禍後の景気後退に苦しむパキスタン国民の苦境に追い打ちを掛けている。同国は石油のほぼ全量をホルムズ海峡経由で輸入しているため、政府が供給を保証していても石油不足に陥るとの懸念が広がった。

パキスタンでは自動車はぜいたく品であり、公共交通機関も十分に整備されていないため、道路を埋め尽くす約3000万台のオートバイや三輪車の燃料として国内のガソリンの約4割が消費されている。

業界関係者やアナリストは、エネルギー危機がパキスタンで電気バイクの普及を加速させると予想している。パキスタンは電動バイクの充電に利用できる安価で豊富な太陽光発電を抱えている。電動バイクへの転換は石油の輸入量削減や外貨準備高の増強にも寄与するほか、2025年に世界で最も深刻だったパキスタンの大気汚染の緩和にも役立つだろう。

パキスタンのガソリン価格は先週18%値上がりした結果、平均賃金(中央値)を得ている国民は1リットルのガソリンに日収の31%を費やすことになった。これはグローバルペトロールプライセズ・ドット・コムとアワーワールド・イン・データが追跡調査している139カ国のうち23番目の水準だった。

南部カラチの警備員、ザフール・アフメドさんは「私の月給は3万ルピーだ。これでは6人家族の生活費をまかなうのがやっとだ。どうやってオートバイのガソリンを満タンにすればいいのか」と嘆いた。

コンサルティング会社リニューワブルズ・ファーストのデータによると、ガソリン価格高騰を背景に25年の電動バイク販売台数は前年の約3倍の9万台に達し、オートバイ販売台数全体の5%となった。

電動バイクの物流計画を手がけるオルコのタルハ・カーン最高経営責任者(CEO)は、26年に入ってからはオートバイ月間販売台数のうち電動バイクの割合が初めて10%を超えたと説明。燃料の給油コストは充電の最大10倍に達するため、電動バイクへの移行は加速すると予想している。

ラホールで電動バイクを購入した主婦のヌーリ・シャバズさんは「現在は戦況が悪いため、ガソリン価格が高騰している。これ(電動バイク)は非常に理にかなったものだと思う。誰もが1台買うべきだ」と訴えた。

<手厚い補助金と無利子ローン>

一般的な電動バイクの価格は約25万パキスタン・ルピー(約14万円)だ。これはパキスタン人の1人当たりの年間所得の半分超に当たり、ガソリンを燃料とするオートバイの人気車「ホンダCD70」(約16万パキスタン・ルピー)より56%も高い。

政府の自動車電動化加速計画(PAVE)が2月に発効し、電動バイクと電動三輪車の購入では価格の5分の1に相当する補助金が支給され、残額については無利子ローンを受けられるようになった。

財務省のアドナン・パシャ顧問はロイターに対し、既に約27万件の受給申請が寄せられており、これは6月に終了するPAVEの第1段階で掲げた目標の7倍弱に相当すると話す。また、政府は5年間に200万台の電動車への融資を目指しており、この計画の資金は既存の燃料販売税で賄う予定だと解説した。

パシャ氏は「200万台の車両を電動化するだけで、それらが使う燃料を輸入する必要がなくなるため、年間5億ドル弱の節約につながる可能性がある」と語った。

<電動化の中心に中国企業>

パキスタンでの電動バイクの拡大を後押ししているのが中国企業だ。ヤディア・グループ・ホールディングス(雅迪集団)」や「ジンペン(Jinpeng)」といった中国ブランドの製品や、「AIMA」や「江蘇新日電動車(Sunra)」などが提供するバッテリーや部品を用いて現地で組み立てられる電動バイクが需要拡大に応えると期待されている。

中国の電気自動車大手、比亜迪(BYD)はパキスタンで協業相手とともに自動車販売を開始し、HUBCOグリーンと組んで全国に充電拠点を建設している。将来的な乗用車の販売拡大に向け、より広範な電動化を支援する計画だと説明している。

パシャ氏は政府がパキスタン企業による充電拠点の建設を望んでいるとし、昨年実施された充電拠点向け電力料金の45%引き下げが電動化を後押ししていくとの見通しを示した。

一方、リニューワブルズ・ファーストのエネルギー金融責任者、アタサム・アフマド氏は中東紛争が長期化すれば財政的なインセンティブが圧迫される可能性があると指摘。また、電動車に関するパキスタンでの専門知識の不足や、充電拠点を十分に拡大できるかどうかもリスクだとした。

パキスタンの道路は他の南アジア諸国同様、穴やくぼみが多く、ガソリン車よりも穴を苦手とする電動車の修理のためにサービス網を整備することも不可欠だ。隣国インドでは電動スクーターへのサービス対応の遅れが起きている。

アフマド氏は「中国企業が市場に殺到すると表面的には有望に見えるかもしれないが、アフターサービスのインフラが事実上存在しないため技術に対する消費者の信頼を損なうリスクがある」と問題視した。

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