- 2021/02/05 掲載
日銀点検を読む:ETF購入抑制へ下地作り、長期金利いずれ議論を=白塚慶大教授
ETFは国債と違って満期がなく、売らない限り日銀のバランスシートに残り続ける金融資産だ。日経平均株価が30年ぶりの高値をつける中、リスクプレミアム拡大に対する懸念は後退しており、見直すべきとの声も多い。
白塚教授は「現在は前場の取引でちょっと下がったらETF買いが入ると思われているが、株式にはボラティリティがあるのが自然。景気を悪化させる大きなショックがあって株価が大幅に下落する局面にならない限り買わない、そういうことで関係者がみな納得するのが大事だ」と話す。
日銀は現在もETF購入について、市場の状況に応じて買い入れ額は上下に変動するとしている。白塚教授は「日銀はこの方針をより鮮明にさせて、しばらく買い入れがない状況が続いてもいい、というコンセンサスをとるのではないか」と予想。そうすれば、景気が悪化した際、買い入れを大きく増やせるようになるという。
<長期金利ゼロ%の意味は>
白塚教授は、現行政策の柱の一つである「イールドカーブ・コントロール」について、「パッチワークされた政策の中ではうまくいっている」とみている。財政への懸念を高めず、長期金利を低位安定させるのは、物価目標達成に向けた持久戦を続けるうえでの大前提で、それなりに意味があるという。
ただ、長期金利誘導目標の10年物国債金利がゼロ%程度というのは、先行き10年間の短期金利の平均値がだいたいゼロということを意味している、と説明。「裏を返すと景気はよくならないし、インフレ率は上がっていかないことを約束している。3月点検では議論されないだろうが、長期金利はずっとゼロでいいのか、本質的にそういう問題は議論されるべきだ」と指摘した。
白塚教授は、コロナ禍の危機対応として、短期的にしっかり財政出動して金融がそれを支えるのは正しいとみている。ただ、こうした政策対応は景気回復局面が来たら巻き戻され、プライマリーバランスが黒字方向に行き、金利が調整されるのが前提のものだと指摘。過去20年間、そうした動きが起きなかったことを踏まえると、この先、日本は十分な備えができないまま人口減社会に突入する可能性が高い、と警鐘を鳴らした。
<「神風」待ち>
日銀が掲げる2%の物価安定の目標については「長期的目標ということで変えようがないし、変える必要もない」という。1%に引き下げたとしても実現できるか分からず、それをどのように達成するのか道筋も描きにくいためだ。
白塚氏は「QQE(量的・質的金融緩和)という能動的な金融政策のアクションによって物価を押し上げようとしたが、それができなかった。じっと我慢して経済・財政が破綻しないようにしながら、どこかで神風が吹くのを待ち続けるしかない」と述べた。
その上で「循環的な好転より、もっと抜本的に社会の構造が変化するようなことが起こらなければ物価は2%に届かないだろう。情報通信技術を中心とした第4次産業革命のようなものがトレンド成長率を大幅に押し上げるような状態に至るかだ」と話した。
1987年3月慶大経済卒、同年日銀入行。金融研究所経済ファイナンス研究課長、松山支店長、金沢支店長、企画局審議役、金融研究所長などを歴任。19年9月から現職。
*インタビューは2月4日、オンライン形式で行った。
(杉山健太郎、木原麗花 編集:石田仁志)
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