- 2021/02/08 掲載
東北3県への企業進出、自動車がけん引=精密大手も進出―東日本大震災10年
東日本大震災から10年。被害が大きかった宮城、岩手、福島の東北3県への企業進出が活発化している。けん引役のトヨタ自動車は国内第三の製造拠点と位置付けており、精密大手も進出した。復興加速には地元に活力を呼ぶ企業誘致が不可欠で、人材確保や新産業創出が課題になる。
工場で1年間に生産される製品などの価値を示す製造品出荷額は、東北3県で2018年に12兆6000億円となった。震災前年(10年の10兆8000億円)を2割程度上回る。このうち自動車などの輸送用機械は10年と比べ約8割増えた。
子会社3社の統合で12年7月に誕生したトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)は、中部、九州に次ぐトヨタグループの一大生産拠点だ。トヨタの国内生産の15%程度を占める。「ヤリス」など小型車の企画、研究開発から生産までを一貫して手掛ける。
同社の林田慎太郎地域連携推進領域長は「東北で自動車産業の基盤をしっかりとつくる」と強調する。19年には東北域内にある部品の取引先が170拠点に上り、11年比で約7割増えた。
トヨタ系部品メーカーも進出。豊田合成は15年に宮城県にゴム部品の工場を新設した。子会社の豊田合成東日本(同県栗原市)の森川聡社長は「リスク分散の観点からも生産拠点を設けた意義は大きかった」と振り返る。22年には樹脂製部品の生産も始める予定だ。
自動車以外の製造拠点も相次ぐ。20年12月、光学部品大手のトプコンは福島県田村市の新工場を稼働させた。平野聡社長は「腰を据えて物事に取り組む人が多い。高精度なレンズ製造に必要な技術を極める人材が確保しやすい」と説明する。被災した冷凍食品製造のヤヨイサンフーズ(東京)は20年11月、宮城県気仙沼市で新工場を稼働させた。小野寺瑞樹工場長は「従業員がまた一緒に働ける」と喜ぶ。
新型コロナウイルスは企業の投資意欲を冷え込ませたが、昨年春のマスク不足をきっかけに海外依存のサプライチェーン(供給網)の見直し機運を高めた。今後、国内生産回帰の候補として東北が注目される可能性もある。
一方、東北経済産業局によると、11~19年に3県で東北以外の事業者による工場用地取得・借り上げ(1000平方メートル以上)は234件。震災前の進出ペースをやや下回る。
ある社長は「ITや事務の人材が足りない」とこぼす。原発事故からの避難が続く福島県では、工場は建っても従業員が確保できないこともある。また同局の渡辺政嘉局長は「新産業の創出などで地域の魅力を高める必要がある」と話す。
【時事通信社】 〔写真説明〕東北での事業を強化したトヨタ自動車東日本の岩手工場の生産ライン(同社提供) 〔写真説明〕トプコンが福島県田村市に設置した新工場で光学レンズを検査する従業員(同社提供) 〔写真説明〕2020年11月に稼働を開始したヤヨイサンフーズの気仙沼工場(同社提供)
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