- 2021/03/12 掲載
ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨
理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。
<イールドカーブ・コントロール>
ECB理事会は全会一致で、次の四半期に月次の資産購入を大幅に拡大することが正当化されるとの決定に至った。特定の日程やイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)には触れていない。ECBはYCCを導入しない。インフレ見通しに応じ、良好な金融調達環境を維持する。
<パンデミック緊急購入プログラム>
必要がなければ、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れ枠を全額利用しない。同時に、良好な資金調達環境の維持が必要であれば、PEPPの買い入れ枠を調整する。
ECBの四半期ベースの決定に基づく月次の買い入れには柔軟性があり、PEPPの実施全期間において、買い入れ枠をどのように活用するかを巡り柔軟性を持たせている。
<特定の数字は念頭にない>
ECBのコミットメントを巡り、どういった形での大幅な買い入れ拡大が必要かを判断するため、分析もしくは共同評価を実施することが得策と考える。
「大幅」な拡大に関し、特定の数字は念頭に置いていない。それは、良好な資金調達環境を維持するコミットメントを堅持したいからだ。
PEPPには十分な柔軟性があり、インフレ見通しに関連し、良好な資金調達環境を見極める上で、特定の数字に縛られることはない。そのため、ECB理事会は次四半期の資産買い入れペースを今年の初めの数カ月から大幅に加速させる方針で一致した。
<バイデン米大統領の刺激策>
過大評価はしていないが、バイデン米大統領の掲げる刺激策には効果があると確信している。主に米国内市場に効果をもたらす多くの政策が盛り込まれている。
ユーロ圏や他国に外需が向かう可能性があり、ユーロ圏の成長見通しにも影響を与えるだろう。それは6月に示すECBの成長見通しに反映されることになる。
<物価上昇圧力>
現在確認されている供給上の制約や内需の回復によって、基調的な物価上昇圧力は年内に幾分高まる見通しだが、低調な賃金上昇圧力や過去のユーロ高を反映し、圧力は総じて抑制されると予想される。
<インフレは中期的に上昇>
パンデミック(世界的大流行)の影響が衰えれば、緩和的な財政・金融政策に支えられる形で高水準のスラック(緩み)は解消され、インフレは中期的に緩やかなペースで上昇するだろう。
<下方リスク>
新型コロナウイルス変異株の感染拡大を含む、現在進行中のパンデミックと、これが経済・財政状況に及ぼす影響は、引き続き下方リスクの源になっている。
<ワクチンが回復の起爆剤に>
現在進められているワクチン接種に加え、抑制策の段階的な緩和は、経済活動が今年は力強く回復するとの見通しを下支えしている。
<第1・四半期もマイナス成長>
継続するパンデミックと感染拡大抑制策が要因となり、2021年第1・四半期の経済は引き続き軟調になることが、入手される情報で示されている。この結果、実質域内総生産(GDP)は第1・四半期に再びマイナスとなる公算が大きい。
<為替相場を注視>
中期インフレ見通しに及ぶ影響を念頭に、為替相場の動向を引き続き注視していく。
<行動の用意>
インフレ率がECBのコミットメントと整合し、持続的に目標に向かうことを確実にするため、必要に応じ全ての政策手段を調整する用意がある。
<良好な資金調達環境が不可欠>
経済活動の下支えと中期的な物価安定を確実にするため、パンデミック中に良好な資金調達環境を維持することは経済の全部門にとって不可欠。
<時期尚早な逼迫>
大規模かつ持続的な市場金利の上昇が放置されれば、経済の全部門で資金調達環境が時期尚早な逼迫(ひっぱく)にさらされる恐れがある。不確実性の低減や信頼感の向上に向けて引き続き良好な資金調達環境が必要となる中、これは望ましくない。
<基調的な物価圧力>
最新のスタッフ予想では、基調的なインフレ圧力が緩やかに上昇する見込みだが、中期的なインフレ見通しは昨年12月時点の予想とほぼ変わっておらず、なおインフレ目標を下回っている。
インフレ率は、主に一過性の要因とエネルギー価格高により、過去数カ月で上昇した。同時に、需要の低迷や労働・生産市場における大幅なスラックから、基調的な物価圧力は依然として抑えられている。
<新型コロナが重荷>
世界的な需要回復と追加の財政措置が世界やユーロ圏の経済活動を支えている。しかし、高いコロナ感染率と変異ウイルスの広がり、それに伴う封じ込め策の延長と強化が、短期的に域内における経済活動の重荷となっている。
<全般的な経済見通し>
全般的な経済状況は年内に改善すると予想されるが、短期的な経済見通しには不確実性が残っており、特にパンデミックの動向やワクチン接種の速度が関連してくる。
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